エアコン工事は電気工事士でないと違法?!資格が「必要な工事内容」と「不要な工事内容」を解説
電気工事士の仕事・転職最終更新日:
エアコン工事において、電気配線に関わる作業を行うには「電気工事士」の資格が必要です。
家庭用のエアコン工事なら、第二種電気工事士で対応可能です。一方で、業務用のエアコンは家庭用に比べ高電圧のため、上位資格の第一種電気工事士を取得していないと工事を行えません。
本記事では、エアコン工事で電気工事士の資格が必要なケースと不要なケース、エアコン工事の流れについて解説していきます。
ご自身のスキルアップを目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
エアコン工事に電気工事士は必要か
エアコン工事には、電気工事士の資格が必要な場合と必要でない場合があります。これは工事内容の種類や対象となるエアコンの規模によって異なります。
基本的な取り付け作業だけであれば資格は不要な場合もありますが、法律により、電気配線に関する工事では電気工事士の資格が必要となります。
(※参考:経済産業省|家庭用エアコンの設置・修理の工事について)
電気工事士の資格が必要なケースと必要でないケースを詳しく見ていきましょう。
エアコン工事に電気工事士が「必要」なケース
エアコン工事の中で、電気工事士の資格が必要になるのは、電気回路や配線を新たに施工・変更する作業が発生する場合です。以下は具体的な例です。
専用コンセントの設置・移設
エアコン専用のコンセントを新たに設置する、または既存のコンセントを移動する場合には、電気工事士の資格が必要です。
特に、エアコン専用の回路が必要な場合は、電源の分岐や新設を伴うため資格が求められます。
室内配線の新設
エアコン用の電源配線を新たに壁や天井内に通す作業は、配線の取り扱いが含まれるため、電気工事士の資格が必須です。これには専用回路の確保も含まれます。
配電盤やブレーカーの操作・増設
配電盤やブレーカーを操作して新しい回路を追加する場合や、エアコン用の専用ブレーカーを設置する作業は、高度な電気工事に該当します。これも資格がなければ行えません。
接地工事(アース工事)
安全性を確保するための接地工事(アース工事)も資格が必要です。
具体的には、接地線を設置したり、接地極を埋め込む作業が該当します。
(※参考:経済産業省|エアコン設置・修理に係る電気工事業法の対象となる主な作業について)
これらの作業は、法令で電気工事士の資格が必要だと定められており、無資格で行うと法律違反となり罰則の対象となります。安全で確実な工事を行うためにも、資格を持った業者に依頼することが重要です。
エアコン工事に電気工事士が「不要」なケース
基本的なエアコン取り付け作業で、電気工事を伴わない場合には資格が不要です。以下は資格が不要な具体的な作業内容です。
配線を伴わない電源接続
エアコンの電源プラグを差し込むだけの作業は資格不要です。
既存のコンセントを利用し、新たな配線工事を伴わない作業が該当します。
配線を伴わない設置作業
室内機や室外機の取り付けは、すでに設置場所に電源や配管が整備されていれば、資格がなくても作業できます。ブロックや架台を使用して室外機を固定する作業もできます。
軽微な配管関連作業
配管を保護するための化粧カバーを取り付ける作業や、冷媒管内部の空気を抜く真空引き作業は資格不要です。
既存の配管をそのまま利用する場合など、冷媒ガスの補充や配管の溶接を伴わない作業が該当します。
(※参考:経済産業省|家庭用エアコン設置・修理工事に伴う電気工事士法・電気工事業法の規制概要)
エアコン工事で使える代表的な資格
エアコン工事に必要な資格は、工事内容や施設の規模に応じて異なります。
家庭用エアコンには第二種電気工事士で対応可能ですが、マンションやビルなどの大規模な施設には第一種電気工事士が必要です。また、業務用エアコンの冷媒を取り扱う場合には冷媒フロン類取扱技術者が求められます。
資格名 | 資格の特徴 | 対応可能なエアコン工事 |
---|---|---|
第二種電気工事士 |
|
|
第一種電気工事士 |
|
|
冷媒フロン類取扱技術者 |
|
|
第二種電気工事士
家庭用エアコン工事を行うための基本資格が「第二種電気工事士」です。この資格があれば、600V以下で受電する設備の電気工事が可能で、家庭用エアコンに必要な工事に対応できます。
具体的には以下のような工事です。
- コンセントの新設や移設
- ブレーカーの交換
- 電圧の切り替え作業(100V⇔200V)
- 内外接続電線の固定
第二種電気工事士は、家庭用エアコン設置や修理に十分対応可能ですが、マンションや中小規模のビルなど、大型施設の工事には適用できません。その場合は第一種電気工事士が必要です。
第一種電気工事士
第一種電気工事士は、マンションや中小規模のビル、工場などで使用される「自家用電気工作物」の工事を行うための資格です。
「自家用電気工作物」とは、ショッピングモールやオフィスビルの空調設備など、規模の大きな施設で使用される電気設備を指します。この資格を取得することで、これらの施設に設置されたエアコンの配線工事や修理を安全に行うことが可能です。
第二種電気工事士では対応できない大規模施設の工事も、第一種電気工事士なら対応可能です。そのため、マンションやビルのエアコン工事では、第一種電気工事士が必要です。
冷媒フロン類取扱技術者
業務用エアコンの冷媒(フロンガス)を適切に扱うためには、冷媒フロン類取扱技術者の資格が必要です。この資格を取得することで、冷媒に関する以下の作業を法令に基づいて行えます。
- 冷媒の回収
- 冷媒の充填
- 定期点検
特に業務用エアコンの撤去や修理では、冷媒を大気中に放出せず適切に回収することが義務付けられています。この作業には冷媒フロン類取扱技術者の資格が欠かせません。
一方、冷媒を扱わない作業ではこの資格は不要です。業務内容に応じて、資格の必要性を確認することが重要です。
基本的なエアコン設置の流れ
基本的なエアコン設置の流れは、以下の6つのステップで行っていきます。
- 【STEP1】設置前の準備
- 【STEP2】室内機の取り付け
- 【STEP3】室外機の設置
- 【STEP4】配管作業
- 【STEP5】真空引きと冷媒充填
- 【STEP6】試運転
【STEP1】設置前の準備
まずは、お客様と相談しながらエアコンを設置する場所を決めていきます。設置場所が決まったら、床や壁を養生して傷つかないように保護します。
【STEP2】室内機の取り付け
室内機を固定するための据付板を取り付けます。取り付け時は、正確な位置を決めてマーキングをし、水平を保つように行います。
新築住宅でエアコン用の穴が開いていない場合は、ドリルで配管穴を開けます。配管を外に通したら、室内機を壁に固定します。
【STEP3】室外機の設置
室外機は、ベランダや屋外の平らな場所に設置します。排気がスムーズに行えるよう、壁や障害物との距離を十分に確保します。
【STEP4】配管作業
室外機の設置が完了したら、配管の接続作業を行います。冷媒管の接続や電線の配線、ドレーンホースの設置などの作業を進めていきます。
【STEP5】真空引きと冷媒充填
冷媒回路の空気を抜き、適切な冷媒を充填します。
配管内に空気が残っていると、エアコンの冷媒と混ざってしまい、凍結や損傷のリスクが高まります。また、エアコンの寿命を縮める原因にもなります。
そのため、エアコンの性能を最大限発揮させるために、真空引き作業は欠かせません。
【STEP6】試運転
全ての取り付け作業が完了したら、試運転を行います。冷房、暖房ともに正常に動作するかを確認します。
問題がなければ、作業場所の清掃と片付けを行い、エアコンの設置工事は完了となります。
エアコン電気工事士の将来性
エアコン電気工事の仕事は、今後も安定した需要が見込まれる分野です。
現代社会においてエアコンはもはや必需品。地球温暖化の影響で夏場の気温上昇が続く中、エアコンの設置や使用は増加傾向にあります。
また、エアコンの電気工事を伴う設置や維持管理、点検作業には電気工事士の資格が必要です。そのため、専門的な知識とスキルを持った電気工事士は、常に需要のある存在です。
エアコン電気工事士の給与
エアコン工事業者の平均年収は約438万円であり、比較的安定した収入が期待できます。
国税庁による「令和5年分民間給与実態統計調査」では日本人の平均年収は460万円と報告されており、エアコン電気工事の年収は、ほぼ平均に近いと言えるでしょう。
なお、エアコン工事業者の収入は、繁忙期や閑散期によっても変動します。
- 繁忙期:5~9月(7~8月が特に多い)
- 閑散期:10~4月
5〜9月、特に7〜8月は夏に向けてエアコンの購入・設置需要が集中するため、工事の依頼が増えてきます。
一方で、10月から4月は閑散期となり、新築やリフォーム案件が中心となります。
電気工事士としてのキャリアパス
電気工事士からキャリアを広げるには、資格の取得が重要になります。
関連資格を取得すれば、業務に活かせるだけでなく、転職を進める上でも有利になるでしょう。
また、電気工事士の資格を取得していれば受験条件が免除される資格もあります。
さらに、電気工事士の資格や経験を活かして、他業種への転職も可能です。
主な転職先は下記のとおりです。
転職先 | 特徴 |
---|---|
電気工事施工管理技士 | 現場での実作業がなく、危険を伴わない |
ビルメンテナンス(ビル設備管理) | ワークライフバランスが取りやすく、体力の負担が軽い |
消防設備士 | 甲種を実務経験なしで受験できたり、乙種4類の試験科目が一部免除される |
サービスエンジニア | 納期に追われる機会が少なく、精神的負担が減らせる |
※参考:電気工事士からの転職におすすめの転職先を 5 つ厳選!成功のポイントを解説
電気工事士で培った知識と経験があれば、エアコン工事だけでなく、現場の管理・監督業務や保守・点検・メンテナンス業務なども担当できるようになります。
エアコン取り付け業者になるには
エアコン取り付け業者になるには、第二種電気工事士以上の資格が必要です。
エアコン設置だけの作業なら資格は不要ですが、電気工事を行うためには第二種電気工事士の資格保有が必要と法律で決められています。
一般家庭のエアコン工事は第二種電気工事士で対応できます。しかし、マンションや中小ビルなど規模が大きい物件の場合は、第一種電気工事士でないと対応できません。
エアコン取り付け業者として独立する場合は、電気工事業法に基づく登録または届出が必要です。
電気工事士の試験は、学歴や経歴、年齢による制限がなく、誰でも挑戦できます。
エアコン取り付け業者を目指す場合は、まずは第二種電気工事士の取得を目標に、着実にステップアップを図っていきましょう。
よくあるQ&A
ここからは、エアコン工事でよくあるQ&Aにお答えしていきます。
エアコン取り付けに資格は本当に必要?
エアコンの単なる取り付け作業であれば、資格なしでも行うことができます。
しかし、取り付けに伴う電気工事を行う場合には、電気工事士の資格が必要です。資格なしで電気工事を行うことは法律で禁止されているため、違反した場合は罰金や懲役が科せられる可能性があります。
■電気工事士の資格が必要な工事の例
- コンセントの新設や移設
- 配線
- ブレーカーの設置
- 接地工事(アース工事)
電気工事士資格を持ってできる工事内容は?
電気工事士の資格には第一種と第二種があり、それぞれ行える工事内容が異なります。
資格ごとに行える工事内容は下表のとおりになります。
資格 | 対応範囲 | 対応できるエアコン工事の例 |
---|---|---|
第二種電気工事士 | 一般家庭用電気工作物 | 家庭用エアコンの電気工事 |
第一種電気工事士 | 一般家庭用電気工作物、自家用電気工作物 | 業務用エアコンの電気工事 |
第一種電気工事士は広範囲の工事が行えますが、一般家庭のエアコン工事なら第二種電気工事士の資格で十分対応できます。
まとめ
この記事では、エアコン工事における電気工事士の資格の必要性や具体的な作業内容、資格ごとの対応範囲について解説しました。また、エアコン取り付け業者としてのキャリアや将来性についても触れています。
エアコン工事の需要は、夏場の気温上昇が続いていることもあり、今後も需要は増え続ける分野です。
電気工事士の試験は、誰でも試験を受けることができます。
エアコンの電気工事業者になるには、まずは電気工事士の資格取得を目指しましょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
◆工事士.comについて
- 電気工事業界専門の求人サイトとして2012年にサービス開始
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