電気通信主任技術者とは?仕事内容や資格試験の合格率と勉強法を解説
電気通信の工事担任者最終更新日:
電気通信主任技術者は、事業用電気通信設備の工事や維持・運用を監督する国家資格です。
5GやAIの登場により今後ますます発展が期待される電気通信業界において、電気通信主任技術者の資格を取得すると活躍の場をより広げることができるでしょう。
この記事では、電気通信主任技術者の仕事内容や試験情報をまとめました。
電気通信主任技術者に興味がある方や、これから受験を目指す方はぜひ参考にしてください。
電気通信主任技術者とは?
電気通信主任技術者とは、事業用電気通信設備の工事や維持・運用を監督する国家資格です。
また、「電気通信事業法」では、事業用電気通信設備を技術基準に適合・維持させるために、一定の規模以上の電気通信事業者は「電気通信主任技術者を選任すること」が義務付けられています。
したがって、電気通信主任技術者は電気通信事業を支える責任ある業務に携わることができるのです。
ここでは電気通信主任技術者について下記2点を詳しく解説します。
なお、「事業用電気通信設備」とは、電話やインターネットなどの通信インフラを支える設備のことです。
現代の社会にとって無くてはならない設備であるため需要が高く、5GやAIの登場でさらなる発展も期待されています。
仕事内容
電気通信主任技術者の仕事は、総務省令で定められる技術基準に適合するよう、事業用電気通信設備の工事や維持・運用を監督することです。
あくまで監督の立場であるため、現場に出て力仕事をすることは基本的にありません。
この資格を保有することで、通信インフラの要となる業務に従事することができ、社会にとって重要な役割を果たすことができます。
具体的な業務内容には、電気通信設備の設計、設置工事の監督、運用、保守があり、それぞれ法的要件に基づいて適正な運用が求められます。
加えて、故障や通信障害が発生した場合の対応や、予防的な保守計画の策定も重要な仕事です。
また、電気通信主任技術者は技術的な知識に加え法的な理解も求められます。
電波の使用や通信の品質管理を行うにあたり、関連する技術的な法律や規制を遵守しなければならないからです。
さらに、電気通信主任技術者はチームで働く機会が多いため、他の技術者や電気通信工事業者とのコミュニケーションも重要なスキルです。
なお、主な配属先は通信事業者やインターネットプロバイダーなど大規模な事業所が多いです。
資格の種類
電気通信主任技術者には「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」の2種類の資格区分があり、それぞれで監督できる範囲が異なっています。
各資格区分が監督できる範囲は以下のとおりです。
■ 電気通信主任技術者の資格の種類と業務範囲
資格区分 | 監督範囲 |
---|---|
伝送交換主任技術者 | 事業用電気通信設備の内、伝送交換設備及びこれらに附属する設備の工事、維持及び運用 |
線路主任技術者 | 事業用電気通信設備の内、線路設備及びこれらに附属する設備の工事、維持及び運用 |
「伝送交換」とは、通信データを送信先へ届けるための技術や機器を指します。
具体的には、以下のようなものが当てはまります。
■ 伝送交換の具体例
- 伝送設備:データを送受信するためのシステムや回線。データを正確かつ高速に伝送する設備。(例:光ファイバー、無線通信設備、衛星通信設備など)
- 交換設備:送られてきたデータを適切な経路に振り分け、通信を成立させるための設備。(例:電話交換機、データセンターのルーター・スイッチなど)
一方、「線路」とは、物理的な通信経路を構築するインフラ部分を指します。
具体的には、電気信号や光信号を送る物理的な回線やケーブルなどがあります。
また、電柱や配管、ビル内の配線器具も対象です。
「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」は、いずれも通信の根幹を担う設備に携わるため、社会の通信ネットワークを支えるため適切に維持管理を行わなくてはなりません。
電気通信主任技術者と他の電気通信工事の資格の違いは?
電気通信関連の資格は数多く、それぞれ役割が異なります。
ここでは電気通信工事に関わる他資格と電気通信主任技術者との違いを比較しました。
電気通信主任技術者の資格取得を目指す前に、他の電気通信系資格との違いをきちんと把握しておきましょう。
工事担任者との違い
電気通信主任技術者と工事担任者は、扱う通信設備の範囲と仕事内容に違いがあります。
それぞれの違いについては、下表のとおりです。
■ 電気通信主任技術者と工事担任者の違い
項目 | 電気通信主任技術者 | 工事担任者 |
---|---|---|
担当する設備の範囲 | 事業用通信設備や大規模な通信ネットワーク全体 | 個別の端末設備または自営電気通信設備 |
仕事内容 | 電気通信設備全体の維持管理や運用の監督 | 電気通信設備の工事、監督 |
工事担任者が扱う通信設備は、主にパソコンや電話機などの「自営電気通信設備」であるのに対し、電気通信主任技術者はパソコンや電話機などの通信を支える「事業用電気通信設備」を扱うことができます。
また、仕事内容についても、工事担任者は施工を行いますが、電気通信主任技術者は監督業務がメインです。
電気通信工事施工管理技士との違い
電気通信主任技術者と工事担任者の違いと同様、電気通信主任技術者と電気通信工事施工管理技士の違いも、扱う通信設備の範囲と仕事内容です。
それぞれの違いについては、下表のとおりです。
■ 電気通信主任技術者と電気通信工事施工管理技士の違い
項目 | 電気通信主任技術者 | 電気通信工事施工管理技士 |
---|---|---|
担当する設備の範囲 | 事業用通信設備や大規模な通信ネットワーク全体 | 有線・無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備 |
仕事内容 | 電気通信設備全体の維持管理や運用の監督 | 電気通信工事の管理 |
電気通信主任技術者の仕事内容は通信設備の運用全体の監督ですが、電気通信工事施工管理技士の仕事内容は電気通信工事の監督です。
電気通信工事施工管理技士は、施工計画の作成、工程の進捗管理、安全管理、品質管理、予算管理など、現場全体の進行を管理しています。
電気通信主任技術者の試験概要
電気通信主任技術者の資格取得を目指すには、まずは試験概要を把握するところから始めましょう。
電気通信主任技術者の試験について、下記項目を順番に解説していきます。
基本事項
電気通信主任技術者試験の基本事項は下記のとおりです。
伝送交換主任技術者と線路主任技術者では、試験科目が異なりますが、それ以外は共通しています。
■ 電気通信主任技術者試験 基本事項まとめ
資格区分 | 伝送交換主任技術者 | 線路主任技術者 |
---|---|---|
試験日程 | 年2回実施(上期1回、下期1回) | |
試験科目 |
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試験時間 |
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受験方式 | マークシート方式 | |
問題数 |
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合格基準点 |
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※参考:受験の手引き( 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター)
受験資格
電気通信主任技術者試験には受験資格がありません。
学歴、経験年数、保有資格等に限らず、誰でも受験することができます。
試験科目
電気通信主任技術者の試験科目は、資格区分(伝送交換主任技術者、線路主任技術者)によって異なります。
伝送交換主任技術者と線路主任技術者それぞれの試験科目は以下の通りです。
■ 電気通信主任技術者の試験科目一覧
試験科目 | 伝送交換 主任技術者 |
線路主任技術者 |
---|---|---|
1.電気通信システム | ◯ | ◯ |
(1)電気通信工学の基礎 | ◯ | ◯ |
(2)電気通信システムの大要 | ◯ | ◯ |
2.伝送交換設備及び設備管理 | ◯ | ― |
伝送交換設備の概要並びに当該設備の設備管理、セキュリティ管理及びソフトウェア管理 | ◯ | ― |
3.線路設備及び設備管理 | ― | ◯ |
線路設備の概要、当該設備の設備管理及びセキュリティ管理 | ― | ◯ |
4.法規 | ◯ | ◯ |
(1)電気通信事業法及びこれに基づく命令 | ◯ | ◯ |
(2)有線電気通信法及びこれに基づく命令 | ◯ | ◯ |
(3)電波法及びこれに基づく命令 | ◯ | ◯ |
(4)不正アクセス行為の禁止等に関する法律及びこれに基づく命令 | ◯ | ◯ |
(5)電子署名及び認証業務に関する法律及びこれに基づく命令 | ◯ | ◯ |
(6)国際電気通信連合憲章及び国際電気通信連合条約の大要 | ◯ | ◯ |
※参考:受験の手引き( 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター)
科目免除
電気通信主任技術者の試験には、科目免除制度があります。
科目免除制度とは、一定の保有資格や実務経験などの条件を満たす場合に、受験者の申請によって試験科目が一部免除される仕組みです。
電気通信主任技術者試験の科目免除条件は下記のとおりです。
■科目免除の条件
- 試験種別ごとの免除科目
- 資格による科目の免除
- 科目合格
- 「資格と実務経験」による科目免除申請
- 「学歴と実務経験」による科目免除申請
- 認定学校単位修得者
科目免除の各条件の詳細は「日本データ通信協会 電気通信国家試験センター」のホームページをご確認ください。
なお、科目免除制度を受けるには、試験申し込み時に申請が必要です。
審査の結果、科目免除が認められると受験票の「受験科目」の表示により通知されます。
科目免除を有する場合は、試験申請受付期間内に忘れずに免除申請を行いましょう。
電気通信主任技術者の合格率・難易度
電気通信主任技術者試験の過去5回の平均合格率は、伝送交換主任技術者が26.1%、線路主任技術者が37.9%です。
それぞれの合格率推移は下記のとおりです。
■ 伝送交換主任技術者の合格率推移
年度 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
---|---|---|---|
平均 | 26.1% | 2,109人 | 541人 |
2024年 第1回 | 21.0% | 2,040人 | 428人 |
2023年 第2回 | 25.6% | 2,257人 | 578人 |
2023年 第1回 | 27.9% | 2,042人 | 570人 |
2022年 第2回 | 29.4% | 2,248人 | 662人 |
2022年 第1回 | 23.9% | 1,960人 | 469人 |
※参考:統計情報 | 電気通信主任技術者(日本データ通信協会 電気通信国家試験センター)
■ 線路主任技術者の合格率推移
年度 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
---|---|---|---|
平均 | 37.9% | 966人 | 366人 |
2024年 第1回 | 31.9% | 932人 | 297人 |
2023年 第2回 | 41.9% | 1,048人 | 439人 |
2023年 第1回 | 33.7% | 968人 | 326人 |
2022年 第2回 | 38.8% | 1,036人 | 402人 |
2022年 第1回 | 43.2% | 847人 | 366人 |
※参考:統計情報 | 電気通信主任技術者(日本データ通信協会 電気通信国家試験センター)
過去5回分の実績によれば、平均合格率は伝送交換主任技術者が約26%に対して、線路主任技術者は約38%となっています。
伝送交換主任技術者と線路主任技術者の合格率を比較すると、伝送交換主任技術者のほうが難易度が高いと言えるでしょう。
【2024年度】電気通信主任技術者の試験日
2024年度の電気通信主任技術者試験日程は以下のとおりです。
■ 電気通信主任技術者 2024年度試験スケジュール
項目 | 詳細 |
---|---|
申請期間 | 第1回:2024年 4月1日(月)~ 4月23日(火) 第2回:2024年10月1日(火)~ 10月22日(火) |
試験日 | 第1回:2024年 7月14日(日) 第2回:2025年 1月26日(日) |
合格発表 | 試験日から3週間後の月曜日に電気通信国家試験センターのホームページで発表 |
※参考:令和6年度電気通信主任技術者試験の公示(日本データ通信協会 電気通信国家試験センター)
電気通信主任技術者の試験は年に2回実施されます。
なお、受験申請はインターネットのみとなっているのでご注意ください。
電気通信主任技術者の勉強方法は?
電気通信主任技術者の試験は、独学でも十分合格を目指すことができます。
電気通信主任技術者の試験勉強におけるポイントは以下のとおりです。
テキストを一周する
まずは全科目を網羅できるテキストを1冊購入し、一通り学習を進めましょう。
テキストを一周することで、全体像を掴めるためです。
分からない部分があっても、まずはテキストの最後まで目を通してみましょう。
1冊で合格を目指すにあたっては、下記のようなテキストがおすすめです。
【これ1冊で最短合格 電気通信主任技術者 要点解説テキスト&問題集[伝送交換主任技術者編]】
※出典:Amazon
過去問を繰り返し解く
試験対策は過去問を重点的に行うと良いでしょう。
過去問を解くメリットは次の通りです。
■過去問を解くメリット
- 出題傾向が把握できる
- 時間配分の練習ができる
- 自分が理解できていない分野を把握できる
- 問題形式に慣れることができる
テキストを一周したら、早めに過去問に取りかかり実践的に学んでいきましょう。
過去問を重点的に行う場合、下記のような問題集がおすすめです。
過去問に加え、各問題に解説が付いているため、間違えた部分をきちんと復習しながら学習することができます。
【23~24年版 電気通信主任技術者試験全問題解答集 共通編】
※出典:Amazon
スキマ時間を活用する
暗記問題は、スキマ時間を活用してインプットすることが効果的です。
電気通信主任技術者の試験は暗記問題が多く出題されるため、スキマ時間に少しずつ知識を定着させていくことができます。
対策アプリを使ったり、暗記事項をノートにまとめて持ち歩いたりして、通勤時間や休憩時間を有効活用しましょう。
電気通信主任技術者の資格取得のメリットは?
電気通信主任技術者の資格を取得するメリットは、以下の3つが挙げられます。
■ 電気通信主任技術者の資格を取得するメリット
将来性のある技術を身につけられる
電気通信主任技術者の資格を取得することで、将来的に役立つ技術を身につけられます。
電気通信業界は5GやAIの登場で今後ますます発展が期待される業界です。
電気通信技術を身につけることで、長く活躍できるスキルを手に入れることができます。
キャリアの向上や安定した雇用を狙える
電気通信主任技術者の資格を持つことで、キャリアアップや雇用の安定に繋がります。
資格取得することで専門的なスキルが証明され、企業内での昇進や重要なポジションへの配置が期待できます。
また、電気通信主任技術者の設置は法令で定められているため、安定した雇用の確保も狙えます。
年収アップに繋がりやすい
資格を取得し電気通信主任技術者に選任されることで、昇給の可能性も高まります。
さらに、資格を取得することで「資格手当」が給与に加算される企業もあります。
また、電気通信主任技術者のポジションや、電気通信の高い専門性を求めている企業へ転職することで年収アップの可能性もあります。
資格を取得できたら、収入アップを積極的に狙っていきましょう。
まとめ
この記事では、電気通信主任技術者について詳しく解説しました。
- 電気通信主任技術者は、事業用電気通信設備の工事、維持・運用を監督する国家資格
- 電気通信主任技術者試験は受験資格がなく、誰でも受験することができる
- 電気通信主任技術者試験の平均合格率は、伝送交換主任技術者が26.1%、線路主任技術者が37.9%
- 電気通信主任技術者の資格取得のメリットは「将来性のある技術を身につけられる」「キャリアの向上や安定した雇用を狙える」「年収アップに繋がりやすい」
電気通信主任技術者は、今後ますます発展が期待される電気通信業界で、高い専門性を得られる資格です。
受験資格がなく、独学でも合格を目指せるため、電気通信業界でのキャリアアップに興味がある方は是非挑戦してみてください。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
◆工事士.comについて
- 電気工事業界専門の求人サイトとして2012年にサービス開始
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※調査元:ゼネラルリサーチ
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