電験三種の理論科目とは?3つの勉強方法や過去問から試験内容を解説!
電気主任技術者(電験)最終更新日:
電験三種(第三種電気主任技術者)の理論科目は、他の科目(電力、機械、法規)の基礎となる重要な科目です。
また、公式を利用した計算問題が多く幅広い範囲から出題されるため、合格するためには計画的に学習を進める必要があります。
この記事では、電験三種の合格を目指す方に向けて、以下のポイントについて解説します。
電験三種の理論科目についての概要を把握し、効率的な勉強方法を取り入れることで、理解が深まり合格の可能性を高めることができるでしょう。
電験三種の合格を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
電験三種の理論科目とは?
電験三種の理論科目では、電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測に関する知識が問われます。
電験三種の理論科目の特徴は以下の3点です。
■理論科目の特徴
- 計算問題が多い
- 他の科目の基礎となる
- 出題範囲が広い
電験三種の理論科目では計算問題が中心となるため、公式の暗記だけでなく応用力も求められます。
また、理論科目で学ぶ知識は、他の3科目(電力、機械、法規)の基礎となるため、最初に学ぶのがおすすめです。
理論科目は出題範囲が広いため、合格するには効率的に学習を進める必要があります。
直流・交流回路、三相交流回路、電磁気学、電子工学など、幅広い分野から満遍なく出題されるため、順序立てて学習することが重要です。
電験三種理論科目の試験内容と試験問題(例)
理論科目の試験は、90分の制限時間内でA問題とB問題が出題されます。
A問題は基礎的な知識を問う問題が中心で、B問題はより応用的な問題が多いです。
この章では、具体的な出題形式や配点、これまでに出題された実際の過去問を例に挙げて詳しく解説します。
理論科目の試験内容
理論科目の試験内容は以下の通りです。
■理論科目試験概要
項目 | 詳細 |
---|---|
試験時間 | 90分 |
合格基準 | 原則60点以上/100点満点中 |
出題内容 |
|
タイプ | 問題数 | 配点 | 合計点 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
A問題 | 14問 | 各5点 | 70点 | 一問一答形式、基礎知識、簡単な計算問題 |
B問題 | 3問 | 各10点 | 30点 | 1問につき2つの小問(各5点)、複雑な計算問題 ※問17・18の問題は選択式 |
※参考:第三種電気主任技術者試験(一般財団法人 電気技術者試験センター)
幅広い分野から出題されるため、各分野をバランスよく学習することが求められます。特に、電気回路や電磁気学に関する問題は出題される可能性が高いため、重点的に対策しましょう。
理論科目の試験問題(例)
以下は、2024年度(令和6年度)の上期試験で出題された問題です。
■2024年度(令和6年度) 第三種電気主任技術者上期試験 理論科目 A問題 問5
※出典:【問題】2024年度(令和6年度)第三種電気主任技術者上期試験 理論科目(一般財団法人 電気技術者試験センター)
問題の解答:(1)0.28
2024年(令和6年)上期の試験で出題された問5の問題は、2023年度(令和5年)上期・2013年(平成25年)にも同じ問題(同じ選択肢)が出題されています。
この問題は、2つの電源がある直流回路において、抵抗Rで消費される電力の値を求める問題です。問題の解き方はいろいろありますが、一般的にはテブナンの定理を利用します。
複数の電源と抵抗で構成されている電源回路を、1つの等価電圧源と等価抵抗に置き換え、負荷変動時の電圧変化を計算することで答えを求めることができるでしょう。
■2024年度(令和6年度)第三種電気主任技術者上期試験 理論科目 B問題 問17
※出典:【問題】2024年度(令和6年度)第三種電気主任技術者上期試験 理論科目(一般財団法人 電気技術者試験センター)
問題の解答:(a)(5)9.0 、(b)(3)4.8
2024年(令和6年)上期の試験で出題された問17の問題は、2023年(令和5年)下期・2015年(平成27年)にも同様の問題(同じ選択肢)が出題されています。
この問題では、複雑なコンデンサ回路の合成静電容量を計算しなくてはなりません。最初に、(a)ではΔ結線からY結線への変換時のコンデンサ値を求め、(b)では変換後の回路全体の合成静電容量を計算します。
電験三種理論科目の合格率と難易度
電験三種(第三種電気主任技術者試験)の理論科目における、過去5年間の平均合格率は21.3%です。
■電験三種(理論科目)の合格率
年度 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
---|---|---|---|
過去5年平均 | 21.3% | 36,516人 | 8,014人 |
2023年 | 29.4% | 38,301人 | 11,278人 |
2022年 | 23.7% | 49,139人 | 11,656人 |
2021年 | 10.4% | 29,263人 | 3,030人 |
2020年 | 24.6% | 31,936人 | 7,867人 |
2019年 | 18.4% | 33,939人 | 6,239人 |
※2022年、2023年は上期・下期の合算
※理論科目合格者数は、4科目合格者数も含め理論科目に合格した者
※参考:第三種電気主任技術者試験(一般財団法人
電気技術者試験センター)※科目ごとの合格率は各年度のプレス発表資料より算出
実施年度によって合格率は変動しますが、理論科目はおおむね20%前後で推移しています。
■その他電気系国家資格の合格率
国家資格 | 合格率 |
---|---|
電験三種(第三種電気主任技術者試験) | 10%前後 |
第一種電気工事士 | 50%前後 |
第二種電気工事士 | 50%前後 |
1級電気工事施工管理技士 | 20%前後 |
2級電気工事施工管理技士 | 20%前後 |
※参考:試験実施状況(一般財団法人
電気技術者試験センター)
※参考:施工管理技術検定(一般財団法人 建設業振興基金)
電験三種(第三種電気主任技術者試験)は、他の電気系国家資格と比較した場合、比較的難易度は高いとされています。
しかし、電験三種の試験では、科目別合格制度(科目合格留保制度)があるため、合格した科目は最大で5回まで試験が免除になります。制度を上手に利用して、計画的に学習すれば電験三種に合格できる可能性はあるでしょう。
電験三種の科目合格制度については「電験三種の科目合格制度を徹底解説!有効期限や確認方法を詳しく紹介」で詳しく解説しています。
また、電験三種の難易度については、「電験三種の難易度は12.2%!合格率が上がってるって本当?受験生の声は?」で詳しく解説しています。
電験三種理論科目に合格するための勉強方法とコツ
理論科目に合格するためには、以下の3つのコツを意識して勉強することをおすすめします。
電験三種を独学で合格する方法は、電験三種(電気主任技術者)の仕事内容は?活かせる職種や試験の基本情報も解説で詳しく解説しています。
上記のコツを意識すれば、効率的に理論科目の合格に近づくことができるでしょう。
それでは詳しく解説します。
まずはテキストを一周する
理論科目の学習を始める際は、テキストを一周するまで通しで学ぶことをおすすめします。
テキストを一通り読むことで、理論科目の全体像を把握し、基礎知識を身につけることができるからです。
テキストを読む際のポイントは以下の3つです。
- 目次を確認し、学習する範囲を把握する
- 各章の要点を意識しながら読み進める
- わからない箇所はメモを取り、後で復習する
テキストの内容が難しく感じられる場合は、高校レベルの数学や物理の復習から始めるのも効果的です。特に、三角関数、ベクトル、複素数などの基礎的な数学知識は、理論科目を理解するのに役立つでしょう。
また、テキストを読んだ後、練習問題に取り組むことで学んだ内容の定着を図ることもできます。この段階では、正解にこだわりすぎず、問題の傾向や解き方のパターンを把握することが大切です。
出題されやすい公式を覚える
理論科目では、出題されやすい公式を重点的に覚えることが必要です。
理論科目では、様々な公式を活用して問題を解く必要があり、公式を覚えないことには計算問題を解くことができないからです。
■効率的に覚えるコツ
項目 | 詳細 |
---|---|
体系的に整理する | 公式を「基本公式」「静電気に関する公式」「磁気に関する公式」などのカテゴリーに分類して整理しましょう。その結果、関連性のある公式をまとめて覚えることができ、理解が深まります。 |
意味を理解する | 単に暗記するのではなく、各公式が何を表しているのかを理解することが重要です。公式の意味や背景を知ることで、応用問題にも対応しやすくなります。 |
関係性を把握する | 公式同士の関係性を理解することで、論理的な思考力が養われます。ある公式から別の公式が導き出される過程を理解できるでしょう。 |
単位に注意を払う | 公式を覚える際は、必ず単位も一緒に覚えましょう。単位の変換ミスは計算結果を大きく変えてしまう原因になります。 |
電験三種の公式については、「電験三種の公式まとめ「これだけ」覚えて賢く合格!」にて、詳しく解説しています。
また、理論科目でよく出題される公式は、本記事の「理論科目でよく出題される公式一覧」で紹介しています。
過去問を活用して問題に慣れる
理論科目の合格を目指すなら、過去問を活用して問題に慣れることが重要です。
過去問を解くことで、実際の試験でどのような問題が出題されるのか傾向を把握することができます。
過去問学習のポイントは以下の3つです。
- 最低でも5年~10年分の過去問に取り組む
- 時間を計って解く練習をする
- 間違えた問題は徹底的に復習する
電験三種の試験問題は過去問をベースに出題されることが多いため、最低でも5年〜10年分の過去問に取り組みましょう。
これまでの過去問の出題状況を見ると、過去に出題された問題がそのまま出題されたり、選択肢を入れ替えただけの問題が出題されたりしています。
また、過去問を解く際は、本番と同じ90分の制限時間を設定し、時間配分を意識しながら解答する練習をするのもおすすめです。
理論科目は計算問題を中心に出題されるので、90分は思った以上に短く感じます。出題分野ごとに時間を設定しておけば、焦ることなく試験を進めることができるでしょう。
工事士.comでは、過去15年分の過去問をクイズ形式でまとめた「第三種電気主任技術者試験過去問クイズ」をご用意していますので、ぜひご活用ください。
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電験三種理論科目の合格に必要な勉強時間
理論科目に合格するために必要な勉強時間は、これまでの学歴や経験によって大きく異なります。過去に工事士.comで行った「電験三種の勉強時間」に関するアンケートでは、以下のような結果が出ています。
■電験三種(理論分野)の勉強時間
学歴 | 理論科目の勉強時間 |
---|---|
電気工学系の卒業生(20代前半) | ~100時間 |
電気工学系以外の理系卒業生(50代) | ~100時間 |
電気工学系以外の理系卒業生(40代) | ~100時間 |
電気工学系・理系以外の卒業生(20代前半) | 100時間~200時間 |
最終学歴が電気工学系及び理系であれば100時間以内、文系であれば200時間以内の勉強時間を想定しておきましょう。
また、休日に詰め込んで勉強するのではなく、毎日1〜2時間程度コツコツ継続して勉強することをおすすめします。
社会人になると時間を確保するのが難しいため、スキマ時間を活用した学習も効果的です。通勤時間やちょっとしたスキマ時間を使って、公式の暗記や簡単な計算問題に取り組むことで、効率的に学習時間を確保できます。
理論科目は他の科目の基礎となる重要な分野です。十分な時間をかけて着実に理解を深めていくことが、電験三種の合格へとつながるでしょう。
電験三種理論科目でよく出題される公式一覧
電験三種の理論科目では、多くの公式を利用して問題を解かなければなりません。公式を理解し、適切に使用できれば合格へ近づけます。
以下に、電験三種の理論科目でよく出題される基本公式をまとめました。
■基本公式
公式名 | 公式 | 詳細 |
---|---|---|
オームの法則 | V = IR | 電気回路の電圧・電流・抵抗の関係を表す公式 |
電力 | P = VI | 単位時間あたりに電気回路で消費されるエネルギー量 |
電力量 | W = Pt | 一定時間あたりに電気回路で消費されるエネルギー総量 |
ジュールの法則 | Q = I²Rt | 導体に電流を流した時に発生する熱 |
周期と周波数 | f = 1 / T | 振動1回あたりを時間で割って表される値 |
波形率 | 波形率 = 実効値/平均値 | 波形率は実効値の平均値に対する比 |
波高率 | 波高率 = 最大値/実効値 | 波高率は最大値の実効値に対する比 |
正弦波交流の実効値 | 最大値 / √2 | 交流波形の効果を同等の直流値で表したもの |
交流電力 (皮相電力) |
S = VI | 電気機器を駆動させる際に供給される電力 |
交流電力 (有効電力) |
P = VIcosθ | 負荷で実際に消費される電力 |
交流電力 (無効電力) |
Q = VIsinθ | 負荷で消費されない電力 |
交流電力 | S = √P²+Q² | 電流と電圧の大きさ・向きが周期的に変化する電力 |
力率 | cosθ = P / S | 供給された電力のうち有効に使用された比率を表す値 |
Y‐Y結線 | 線電流 = 相電流 線間電圧=√3 × 相電圧 |
一次側と二次側をY結線(スター結線)で接続すること |
Δ‐Δ結線 | 線電流 = √3 × 相電流 線間電圧 = 相電圧 |
一次側と二次側をΔ結線(デルタ結線)で接続すること |
上記以外にも、理論科目では多くの公式を覚える必要があります。また、複数の公式を使用して答えを導き出す問題もあることから、公式を覚えられない人は「語呂合わせ」を活用するのもおすすめです。
電験三種理論分野の勉強におすすめのツール(Webサイト・テキスト・アプリなど)
電験三種の理論分野を効率的に学習するには、適切なツールを活用することが重要です。ここからは、Webサイト、テキスト、アプリなど、様々な学習ツールをご紹介します。
ツールを組み合わせて使用することで、より効果的な学習が行えます。
おすすめのWebサイト
電験三種の理論分野を学習する上で、以下のWebサイトがおすすめです。
■おすすめのWebサイト
サイト名 | 詳細 |
---|---|
一般社団法人 電気技術者試験センター | 受験案内以外にも、過去問や試験に関するQ&Aなど、電気技術者に有益な情報を発信している |
工事士.com(電験三種 過去問クイズ) | 電気主任技術者の求人や転職情報を扱っているサイト。過去問クイズなどのコンテンツを無料で利用可能。 |
電験3種ドットコム | 出題科目・出題分野ごとに解説されており、無料で解説動画も視聴可能 |
電験王 | 過去問解説や勉強法、合格者の声など、受験者に有益な情報を提供している |
おすすめのWebサイトを活用することで、基礎知識の習得から応用まで、幅広く実力を鍛えることができます。また、最新の試験情報やトレンドも把握できるため、効率的な学習計画を立てるのに役立つでしょう。
おすすめのテキスト
電験三種の理論分野を学ぶ上でテキスト選びは重要です。ここからは、タイプ別におすすめのテキストをご紹介します。
■初心者におすすめ
テキスト名 | 出版元 | 特徴 |
---|---|---|
【電験三種 やさしく学ぶ】理論 | オーム社 | 初学者向けに作られており、基礎知識や公式を覚えるのに適している |
【これだけ】理論 | 電気書院 | やさしい問題から学べ、章末にはチャレンジ問題も掲載 |
【誰でもわかる】電験参考書 | 誰でもわかる電験参考書研究会 | 基礎知識を準備運動として学べる |
■過去問に特化した参考書
テキスト名 | 出版元 | 特徴 |
---|---|---|
【2024年版 電験3種過去問題集】 | 電気書院 | 過去10回分の問題と解答・解説を科目ごとに収録 |
【みんなが欲しかった! 電験三種の10年過去問題集 2024年度】 | TAC出版 | 図表付きで初心者にもわかりやすく、分冊可能 |
【2024-2025年版 電験三種過去問詳解】 | オーム社 | 過去15年分から選抜した330問と最新の試験問題を解説付きで掲載 |
それぞれ特徴が異なるので、自分の学習スタイルや目的に合わせて選択することが大切です。
電験三種の理論分野を学ぶのにおすすめのテキストは、「電験三種の参考書選びのポイントとお勧めテキスト9点!」でも詳しくお伝えしています。
おすすめのアプリ
スマートフォンやタブレットを活用した学習方法は、時間や場所を選ばず効率的に勉強できる点で非常に便利です。以下に、電験三種の理論分野を含んだ学習アプリをご紹介します。
■おすすめのアプリ
アプリ名 | 対応OS | 詳細 |
---|---|---|
電験三種 法規 電力 理論 機械 試験対策の過去問題集アプリ | Android | 1問解答ごとに詳しい解説が表示される過去問題集アプリ |
第三種電気主任技術者 |試験問題演習アプリ | iOS | 無料で利用でき、ブックマークやテスト機能で復習に便利 |
第三種電気主任技術者 資格試験対策D-Learning | iOS | 復習や途中再開機能が充実しているアプリ |
学習アプリを活用することで、通勤時間や待ち時間など、わずかな空き時間も有効に使えます。なかなか学習時間が取れない方にとってはおすすめの勉強方法なので、ぜひ活用してみましょう。
まとめ
この記事では、電験三種の理論科目について詳しく解説しました。理論科目は、電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測に関する知識が問われる重要な分野です。
主な特徴は以下の通りです。
- 計算問題が多い
- 他の科目の基礎となる
- 出題範囲が広い
理論科目は公式の暗記だけでなく応用力も求められ、他の3科目(電力、機械、法規)の基礎となることから、最初に学習することをおすすめします。
しかし、幅広い分野から出題されるため、効率的に学習計画を立てなければなりません。学習を効率的に進めるためには3つのポイントを意識しましょう。
- テキストで基礎を固める
- 頻出する公式を理解し暗記する
- 過去問演習で実践力を養う
電験三種の理論科目は難易度が高いですが、この記事の情報を参考に効率的な学習計画を立て、電験三種合格を目指してください。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
◆工事士.comについて
- 電気工事業界専門の求人サイトとして2012年にサービス開始
- 転職活動支援実績は10,000社以上
- 「電気工事士が選ぶ求人サイト」として「使いやすさ」「信頼度」「支持率」の三冠を獲得※
※調査元:ゼネラルリサーチ
「ITとアイデアと情熱で日本の生活インフラを守る」をミッションに掲げ、建設業界で働く方々を支援するサービスを提供しています。
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