- 空調設備は温度、湿度、空気清浄、気流を総合的に管理する設備
- 一般的なエアコンとは異なり、建物全体の空気環境を管理するシステムである
- 空調設備業界で活躍するためには、第二種電気工事士などの資格取得が推奨される
『空調設備』とは?エアコンとの違いは?仕組みから資格まで、業界初心者が知っておきたい全て
電気工事士の仕事・転職最終更新日:
空調設備とは、快適な室内環境を実現するための「空気調和設備」のことです。
一般的なエアコンとは異なり、温度、湿度、空気清浄、気流を総合的に管理し、建物全体の空気環境を整える重要な設備システムとして活用されています。
この記事では、空調設備の基本的な仕組みから種類、特徴、そして関連する仕事や資格まで、詳しく解説します。
空調設備に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
空調設備とは?その基本と役割
空調設備とは「空気調和設備」の略称で、温度、湿度、空気清浄、気流を総合的に管理する設備のことです。
オフィスや店舗、工場など、私たちの快適な生活を支える重要な設備として活用されています。
では、具体的にどのような定義や役割があるのか、詳しく見ていきましょう。
空調設備の定義
空調設備は、建築物環境衛生管理基準において以下のように定義されています。
エア・フィルター、電気集じん機等を用いて外から取り入れた空気等を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給(排出を含む。)することができる機器及び附属設備の総体
空調設備は、熱源機器、空気を送り出す送風機、空気を浄化するフィルター類など、複数の設備が一体となって機能することで、快適で衛生的な空気環境を実現します。
空調設備の主な役割
空調設備の主な役割は、以下の4つの空気調和機能を組み合わせて、快適な室内環境を作り出すことです。
■空調設備の4つの機能
- 温度調整:冷暖房による室温管理
- 湿度調整:加湿や除湿による最適な湿度維持
- 空気清浄:フィルターや集じん機で汚染物質を除去
- 気流調整:室内の空気の流れを分配
これらの機能は互いに関連し合っています。例えば、真夏のオフィスでは、室温を下げながら適度な湿度を保ち、新鮮な外気を取り入れることで、より快適な環境の実現が可能です。また、空気の流れをコントロールすることで、室温のムラを解消し、効率的な空調運転が可能になります。
業務用の空調設備では、「圧力調整」(建物内外の気圧差を管理し、適切な換気を維持)の役割も含まれています。
空調設備が活躍する場面とは
空調設備は、その目的によって「保健空調」と「産業空調」の2つに分けられます。
■保健空調(快適性を目的とした空調)
人の健康や快適性を重視し、居住空間や公共施設で広く利用される空調です。
- オフィスビル:働きやすい環境を確保
- 商業施設:快適な買い物環境を提供
- 病院:衛生環境を管理し、感染リスクを低減
- 学校:集中しやすい学習環境を整備
■産業空調(生産環境や品質管理を目的とした空調)
製品や機器の品質を維持し、最適な生産環境を整えるための空調です。
- 工場:製造工程の品質を維持
- 倉庫:保管品の劣化防止
- データセンター:サーバー機器の温度管理による、安定稼働の確保
このように、空調設備は私たちの生活だけでなく、産業の発展にも欠かせない重要な役割を果たしています。
空調設備とエアコンの違い
空調設備は「空気調和設備」の略称で、一般的に建物全体の空気環境を管理するシステムを指します。
一方、エアコンは「エアーコンディショナー」の略で、主に個別の空間の温度と湿度を調整する機器です。
以下の表で主な違いを比較してみましょう。
比較項目 | 空調設備 | エアコン |
---|---|---|
主な機能 |
|
|
換気機能 | あり(外気との入れ替え可能) | なし(室内空気の循環のみ) |
設置規模 | 大規模施設向け | 小規模施設向け |
主な設置場所 |
|
|
※参考:パナソニック 空質空調社/アイエスエアー
空調設備とエアコンを使い分けるポイントは、建物の規模と用途です。エアコンは部屋ごとに個別の温度調整を行うのに適しており、住宅や小規模オフィスでよく使われます。一方、空調設備は建物全体の空気環境を一括で管理するシステムで、大規模な施設や換気が必要な場所に適しています。
つまり、空調設備は温度調整だけでなく、換気や空気清浄などを組み合わせた総合的な空気環境管理システムといえるでしょう。
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空調設備の種類と特徴
空調設備は、熱を運ぶ方式によって4つの種類に分けられます。
「全空気方式」、「全水方式」、「空気・水併用方式」、「冷媒方式」です。
それぞれの方式について、仕組みや特徴を詳しく見ていきましょう。
全空気方式、全水方式、空気・水併用方式、冷媒方式の違い
空調方式は、熱を運ぶ仕組みの違いによって、以下の4つに分類されます。
方式 | 媒体 | 仕組み |
---|---|---|
全空気方式 | 空気 | 空調機で温度調整した空気をダクトで各室に供給 主な設置場所:体育館、ホール、劇場 |
全水方式 | 水 | 冷水・温水を配管で供給し、室内機で空気を調整 主な設置場所:オフィスビル、ホテル |
空気・水併用方式 | 空気と水 | 空気と水の両方を使って温度調整を実施 主な設置場所:大規模オフィス、病院 |
冷媒方式 | 冷媒 | 冷媒を圧縮・膨張させて温度調整を実施 主な設置場所:小規模店舗、一般住宅 |
※参考:ダイキン工業株式会社
それぞれの方式は、建物の用途や規模によって使い分けられています。全空気方式は大空間向き、冷媒方式は個別空間向きといったように、設置場所の特性に合わせて最適な方式が選択されています。
各方式のメリット・デメリット
空調方式には、それぞれメリットとデメリットがあります。
以下の表にまとめました。
方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
全空気方式 |
|
|
全水方式 |
|
|
空気・水併用方式 |
|
|
冷媒方式 |
|
|
以上のメリット・デメリットを踏まえ、建物の用途や規模に応じて最適な方式を選択しましょう。
用途別の空調方式の選び方
空調方式の選定では、建物の用途や規模が重要なポイントです。
例えば、体育館やホールなどの大空間には「全空気方式」が向いています。理由は、ダクトを通じて大量の空気を送り込めるため、空間全体を均一に空調できるためです。また、換気量を多く確保できるので、CO₂濃度の上昇を抑えることもできます。
一方、オフィスビルでは「全水方式」や「空気・水併用方式」がよく採用されます。「全水方式」はダクトスペースを省略でき、配管が細いため省スペースで導入可能です。「空気・水併用方式」は温度調整に水を使いながら、一部の換気を空気で行うため、省エネ性と快適性のバランスが取れています。
また、小規模な店舗や事務所には「冷媒方式」が適しています。ダクト工事が不要なため、省スペースで設置でき、個別制御が容易なのがメリットです。ただし、換気機能がないため、全熱交換器などの換気設備を併用する必要があります。
このように、建物の特性や用途に合わせて最適な方式を選ぶことで、快適な空調環境を実現できます。
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空調設備の仕組みを詳しく解説
空調設備は主に「熱源設備」「熱搬送設備・空気搬送設備」「空気調和設備」で構成されています。
それぞれの設備がどのように連携して室内環境を整えているのか、具体的な仕組みを見ていきましょう。
空調設備を構成する部品とその役割
空調設備には、多くの部品が使用されており、それぞれが連携して快適な空気環境を作り出しています。
以下で主要な設備における、部品と役割を紹介します。
■熱源設備(熱を生み出す設備)
空調に必要な冷暖房用の熱を作り出す心臓部です。
- ボイラー:暖房用の温水や蒸気を作り出す
- 冷凍機:冷水を作り出し、冷房に利用
- ヒートポンプ:電気を利用し、冷房・暖房の両方を効率的に行う
■熱搬送設備(熱を運ぶ設備)
熱源設備で作られた熱を、室内の空調機器まで運ぶ設備です。
- ポンプ:冷水や温水を循環させる
- 配管:冷水・温水・蒸気などの熱媒体を運ぶ
■空気搬送設備(空気を運ぶ設備)
温度調整された空気を室内に送る設備です。
- ダクト:空気を建物内の各エリアへ送る経路
- 送風機(ファン):空気を循環させる
■空気調和設備(空気の状態を整える設備)
実際に室内の空気を調整する機器です。
- 熱交換器(冷却コイル・加熱コイル):空気を冷却・加熱して温度を調整
- 加湿器・除湿器:湿度を調整(乾燥・過湿を防ぐ)
- フィルター:空気中の粉じんや汚染物質を除去
これらの設備が一体となって動作することで、室内の温度・湿度・空気清浄度を適切に保ち、快適な空気環境を実現します。
システム全体の流れをわかりやすく解説
空調設備の動作の流れは、以下の順番で行われています。
1. 熱源設備での熱生成
- ボイラーや冷凍機(チラー)で冷水・温水を作る
- 必要な温度に調整し、冷房・暖房に利用可能な状態にする
2. 熱搬送設備・空気搬送設備での熱・空気の移動
- 熱搬送設備(配管・ポンプ):冷水・温水を各空調機へ循環
- 空気搬送設備(ダクト・送風機):温度調整された空気を各部屋へ送る
3. 空気調和設備での空気調整
- エアフィルター:空気中の粉じんや汚染物質を除去(空気清浄)
- 加湿器・除湿器:適切な湿度に調整
- 熱交換器(冷却コイル・加熱コイル):空気の温度を調整
- 送風機(ファン):処理された空気を室内へ供給
4. 室内環境の維持
- 快適な温度を保持
- 適度な湿度を維持
- 空気の清浄度を確保
- 気流を適切にコントロール
このように、空調設備は4つの主要設備が連携して動作し、室内環境を快適に保ちます。また、室内から排出された還気(室内の空気)は、空調機に戻され、再び処理されて循環を繰り返します。
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空調設備に関わる仕事
空調設備に関わる仕事は、設計、施工管理、施工(設備工事)、保守・メンテナンスなど多岐にわたります。それぞれの職種で必要なスキルや資格は異なりますが、快適な空間づくりに欠かせない専門性の高い仕事です。
ここからは、空調設備に関連する仕事と必要なスキルについてご紹介します。
空調設備に関わる職種を紹介
空調設備に関わる職種には、以下の専門職があり、それぞれの立場で快適な空間づくりを支えています。
職種 | 関連資格 |
---|---|
設計 |
|
施工管理 |
|
施工(設備工事) |
|
保守・メンテナンス |
|
各職種は互いに連携し、建物の計画段階から運用段階まで、一貫した品質管理を行います。また、経験を積むことで専門的な技術や知識を深め、より高度な業務に携わることができる職種です。
各職種で必要なスキルと仕事内容
各職種で求められるスキルと仕事内容は以下のとおりです。
職種 | 仕事内容 | 求められるスキル |
---|---|---|
設計 | 空調設備の設計を行い、建築物の構造や用途に応じた効率的な空調システムを提案・構築します。 |
|
施工管理 | 設計図を基に、空調設備の施工現場を管理します。 |
|
施工 | 実際に空調設備の設置・配管・配線などを行う作業を担当します。 |
|
保守・メンテナンス |
既存の空調設備の点検・修理・保守を行い、設備が正常に稼働するように維持管理します。 また、故障や老朽化した部品の交換を担当します。 |
|
目指すキャリアが明確になれば、自分に必要なスキルや資格、経験が見えてきます。また空調設備業界では、技術力だけでなく、顧客満足や環境への配慮など多角的な視点を持つことも重要です。
「施工現場のリーダーとして活躍したい」「保守のスペシャリストとして長く信頼される存在になりたい」など、自分が目指す理想のキャリアを描き、それに向けて一歩ずつ成長していきましょう。
業界未経験者がまず知るべきこと
未経験から空調設備業界に入る場合、技術の習得や現場での動き方に不安を感じることも多いでしょう。スムーズに業界に適応し、長く活躍するためには、以下のような心構えが重要です。
1. 学ぶ姿勢を持つこと
空調設備の仕事には、専門的な技術や知識が必要です。未経験者は、最初のうちはわからないことが多いですが、学び続ける意欲があれば、確実に成長できます。 現場では先輩や上司から指導を受ける機会が多いため、素直に教わる姿勢が重要です。
また、資格取得を目指すことも大切です。例えば、第二種電気工事士や冷媒フロン類取扱技術者などの資格を取ることで、できる仕事の幅が広がり、より専門的な業務にも携われるようになります。
2. 体力の準備をすること
エアコンの室外機やダクトなど、重量のある機材を運ぶこともあるため、ある程度の筋力や持久力が必要になります。 普段から軽い筋トレやストレッチを行い、体を慣らしておくとよいでしょう。
3. チームワークを意識すること
空調設備の現場では、職人同士や施工管理者との連携が欠かせません。そのため、円滑なコミュニケーションを心がけることが大切です。
また、安全第一で行動することも大切です。空調設備工事では高所作業や電気工事を伴うことが多く、事故のリスクもあります。
4. 段取りを意識すること
現場作業では、事前の準備や計画が作業の効率を大きく左右します。 先輩や上司の動きをよく観察し、「次にどんな作業が必要か」を考えながら行動することで、よりスムーズに仕事を進められるようになります。
5. 仕事を楽しむこと
未経験から空調設備業界に入ると、最初は大変なことが多いですが、やりがいを見つけることでモチベーションを維持しやすくなります。 「この作業をやってみたい」「もっと知識を増やしたい」といった前向きな気持ちが、成長のスピードを早めます。
空調設備の業界は、手に職をつけられる仕事であり、技術を習得すれば長く活躍できる分野です。
最初は覚えることが多く、大変に感じるかもしれませんが、経験を積むことで確実にスキルが向上します。
前向きな姿勢で取り組み、一生ものの技術を身につけていきましょう。
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空調設備関連の資格を取るには?
空調設備の業界では、様々な資格が重要な役割を果たしています。どのような資格があり、どのように取得すればよいのか、詳しく解説していきます。
空調設備に関連する資格一覧
空調設備業界で活躍するために、取得しておきたい資格をまとめました。
資格名 | 特徴 |
---|---|
建築設備士 |
|
1級管工事施工管理技士 |
|
2級管工事施工管理技士 |
|
1級冷凍空調技士 |
|
消防設備士 |
|
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者) |
|
第二種電気工事士 |
|
以上の資格の多くは、一定の実務経験が必要です。将来のキャリアプランや業務内容に合わせて、計画的に取得を目指しましょう。
■ 関連記事
空調設備業界で役立つ資格については「空調設備工事に役立つ資格7つを解説!概要一覧や難易度ランキングも紹介」で詳しく解説しています。
資格取得のステップと勉強法
空調設備関連の資格は、段階的に取得するのがおすすめです。
■資格取得の流れ
- まずは取得しやすい資格から挑戦
例:第二種電気工事士、2級管工事施工管理技士、乙種消防設備士など - 基本資格を取得後、実務経験を積みながら上位資格に挑戦
例:1級管工事施工管理技士、1級冷凍空調技士など
■効果的な勉強方法
- 参考書で基礎理論を理解する
- 現場での実務と結びつけて学習する
- 通信講座や資格学校を活用する
- 過去問題を徹底的に解き、試験形式に慣れる
多くの企業では資格取得支援制度を設けており、受験料の補助や資格手当の支給を行っています。こうした制度を上手に活用しながら、計画的に資格取得を目指しましょう。
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まとめ
今回は、空調設備の基本から役割、種類、仕事内容までを詳しく解説しました。
- 空調設備は温度、湿度、空気清浄、気流を総合的に管理する設備
- 一般的なエアコンとは異なり、建物全体の空気環境を管理するシステムである
- 空調設備業界で活躍するためには、第二種電気工事士などの資格取得が推奨される
空調設備は、私たちの快適な生活や産業を支える重要な設備です。技術革新が進む中、専門性の高い知識とスキルを持った人材が求められています。
興味のある方は、資格取得からスタートしてみてはいかがでしょうか。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
◆工事士.comについて
- 電気工事業界専門の求人サイトとして2012年にサービス開始
- 転職活動支援実績は10,000社以上
- 「電気工事士が選ぶ求人サイト」として「使いやすさ」「信頼度」「支持率」の三冠を獲得※
※調査元:ゼネラルリサーチ
「ITとアイデアと情熱で日本の生活インフラを守る」をミッションに掲げ、建設業界で働く方々を支援するサービスを提供しています。
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