エアコン工事で独立を目指すには?5つのステップや必要資格と失敗しないポイント解説
電気工事士の仕事・転職最終更新日:
現代社会において、エアコン工事は新築やリフォーム時の設置だけでなく、故障時の修理対応など、季節を問わず依頼が見込まれる仕事です。
そのため、エアコン工事の需要が今後なくなることは考えにくく、エアコン取り付け業は独立開業のチャンスも十分にあると言えます。
特に近年は、地球温暖化の影響で夏場の気温上昇が続いていることから、エアコンの設置や使用も年々増加傾向にあります。家庭だけでなく、オフィスや店舗など、あらゆる場所でエアコンは必需品となっています。
本記事では、エアコン工事で独立するためのステップや必要な資格、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
エアコン工事での独立を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
エアコン工事で独立するための5ステップ
エアコン工事での独立を成功させるためには、計画的な準備と実践が欠かせません。独立への具体的なステップを5つに分けて解説していきます。
1.電気工事会社に就職し技術を習得する
電気工事会社に就職すると、エアコン工事の実践的な技術を習得しやすくなります。
現場では、電気配線や冷媒管の接続技術、壁穴の加工などさまざまな業務がありますが、電気工事会社で働くことにより、経験豊富な先輩や上司から直接指導を受けることができます。
もちろん、スクールや講習でも基礎的な知識は得られますが、電気工事会社に就職すれば実際の現場で指導を受けながら経験できるため、技術の習得がより早くなります。また、正社員として就職するとアルバイトより長期間にわたって働くことができるため、より幅広い業務に携わる機会もあるでしょう。
さらに、実際の現場では予期せぬトラブルが発生することもあります。電気工事会社で経験を積んでいくことで、緊急時の対応方法も身につけられます。数年は下積みが必要ですが、働きながら独立に向けた準備も進められます。
■関連記事
電気工事会社に入社するまでのステップは「エアコン取り付け業者になるには?必要な資格やスキルと成功のステップを解説」で詳しく解説しています。
2.第二種電気工事士の資格を取得する
エアコン工事での独立を考えているなら、第二種電気工事士の資格を取得しましょう。
エアコンの取り付け作業のみであれば資格は必要ありませんが、第二種電気工事士の資格を持っていると、エアコン工事のより幅広い業務を行うことができます。
第二種電気工事士の有資格者ができる作業の一例は、下記のとおりです。
■第二種電気工事士ができるエアコン工事業務
- 専用コンセントの設置
- 室内配線の新設
- 配電盤やブレーカーの操作、新設
第二種電気工事士の資格があれば仕事の幅も広がるため、将来を見据えて早めに取得を目指しましょう。また、資格があることで、受注できる仕事の幅が広がるため、収入アップにも繋がります。
3.電気工事業者の登録を行う
エアコンの設置や修理を行うには、電気工事業者の登録が必要です。
電気工事業者の登録を行うには、営業所に主任電気工事士を置くことが義務付けられています。主任電気工事士になるための資格と条件は下表のとおりです。
■ 主任電気工事士になるための条件
必要資格 | 条件 |
---|---|
第一種電気工事士 | 免状の交付を受けている |
第二種電気工事士 | 免状の交付を受けて、電気工事に関して3年以上の実務経験を有している |
※参考:家庭用工アコンの設置・修理の工事について(経済産業省)
電気工事業者の登録は、専任の第一種電気工事士または第二種電気工事士の設置が必要です。独立にあたって、主任電気工事士の条件を満たせるよう事前に準備をしておきましょう。
4.仕事を受注できる基盤を整えておく
家電量販店や引っ越し業者が募集している協力業者に登録し、継続的に仕事を受注できる基盤を整えておきましょう。
エアコン工事は需要が高いため、協力業者になれば独立後の取引先も見つけやすくなります。
また、マッチングサイトの利用も効果的な方法の1つです。多くのユーザーが利用していることもあり、顧客のニーズに直接アプローチができます。サイト内のレビューは信頼性の向上にも繋がります。
その他にも、施工事例や料金設定を掲載したHPの作成やSNSを活用した認知度の向上も欠かせません。必ずしも仕事が受注できるとは限らないため、基盤を整えるには、改善を繰り返しながらの継続が必要です。
5.独立する
独立前には、目標とする売上高や必要な運営資金、事業計画などを明確にしておく必要があります。綿密な事業計画を立てることで、独立後の運営がスムーズになります。
また、開業時期の選定も重要です。需要の多い時期に向けて準備を進めることで、スムーズなスタートが切れるでしょう。
エアコン工事で独立するメリットとデメリット
エアコン工事の独立を考える際は、メリットとデメリットを十分に理解しておく必要があります。ここでは、エアコン工事で独立するメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
■エアコン工事で独立するメリット
■エアコン工事で独立するデメリット
メリット1:自由に働ける
エアコン工事で独立すると、会社員のような決まった勤務時間に縛られることなく、仕事の量や時間帯を調整しやすくなります。繁忙期や閑散期に合わせて、自分のペースで仕事を進められるのが特徴です。
また、特定の地域や工事内容を得意分野に特化したサービスも提供できます。「エアコン取り付け専門」や「業務用エアコンにも対応」など自分の強みを活かした自由な働き方も可能です。
メリット2:より高い収入を狙える
エアコン工事で独立すると、工事で得た収入が直接自分の収入になるため、会社員よりも高い収入を狙えます。特に、エアコンの取り付けや取り外し、メンテナンスの単価は高いため、1日に複数件の依頼をこなせば、それだけ収入も増やすことができるでしょう。
特に夏場の繁忙期は需要が高まるため、短期集中的に稼ぐこともできます。さらに、業務用エアコンの設置ができれば、より高単価の案件も獲得できるため、さらなる収入アップが見込めます。
メリット3:仕事が多い
エアコン工事は、新築やリフォーム時の設置、引っ越しに伴う交換作業など、年間を通じて需要があります。
夏と冬は工事の需要が高くなりやすく、特に7~8月は繁忙期のため、収入も増えやすくなります。
また、近年の温暖化による気温上昇から、エアコン自体の需要も増加傾向にあります。夏や冬以外も需要があるので、仕事に困ることは少ないと言えるでしょう。
デメリット1:収入が不安定になる
エアコン工事は季節によって収入が大きく変わりやすいです。例えば、夏と冬は冷暖房の需要が高まりますが、春や秋はエアコンの使用頻度が下がるため、工事依頼も減少しがちです。
繁忙期には依頼が集中する一方で、閑散期はほとんど仕事が来ない状況も考えられます。安定した収入を確保するためには、季節変動に左右されない事業計画を立てないといけません。
デメリット2:全ての仕事を1人で行わなければならない
エアコン工事で独立した場合は、工事作業だけではなく業務全般を1人でこなす必要があります。
独立した際に行わなければならない業務は、下記のとおりです。
■エアコン工事で独立後の仕事内容(一例)
- 営業活動
- 集客
- 事務作業
- 収支の管理
- 在庫や資材の管理
- アフターフォロー
これらの業務に時間を取られると、1日に対応できる工事件数が制限されてしまいます。したがって、独立後は効率的な業務管理と時間配分が重要です。
エアコン工事で独立するために必要な資格は?
エアコンの取付工事自体に必要な資格はありませんが、独立して活躍するためには資格取得が欠かせません。ここからは、エアコン工事で独立するために必要な資格を4つ紹介していきます。
第二種電気工事士
第二種電気工事士は電気工事に関する国家資格で、一般住宅や小規模施設の電気設備の工事や修理を行うことができます。
第二種電気工事士の試験は、学歴や性別、職歴に関係なく受験できるため、電気工事の実務経験も必要ありません。試験内容も基礎的な知識や技術が中心となっているため、未経験の方でも独学で合格を目指すことができます。
エアコン工事で独立する際は「電気工事業」の登録が必要となりますが、電気工事業に登録するには「主任電気工事士」を設置しなければなりません。
主任電気工事士になるためには、第二種電気工事士の資格取得と3年以上の実務経験が求められます。したがって、第二種電気工事士の資格を早めに取得し実務経験を積めば、最短で独立を目指すことができます。
■関連記事
第二種電気工事士の資格の取り方や難易度については、下記記事もあわせてご確認ください。
冷媒フロン類取扱技術者
冷媒フロン類取扱技術者は、エアコンの冷媒に関する作業を行うために必要な資格です。なお、冷媒フロン類取扱技術者の資格取得には一定の実務経験が必要です。冷媒ガスの回収や充填作業、廃棄時の処理といった作業を行いながら、必要な知識と技術を身につけられます。
冷媒フロン類取扱技術者は、主に下記の2種類に分かれています。
■ 冷媒フロン類取扱技術者の資格種類
種類 | 対応可能な工事 |
---|---|
第一種冷媒フロン類取扱技術者 | 業務用、家庭用に関わらず対応可能 |
第二種冷媒フロン類取扱技術者 | 家庭用エアコンの冷媒回収に対応可能 |
※参考:冷媒フロン類取扱技術者とは(一般社団法人 日本冷凍空調設備工業連合会)
業務用エアコンを扱う場合は第一種、家庭用エアコンを扱う場合は第二種の資格が必要です。家庭用エアコンを中心に取り扱う場合は第二種で十分ですが、将来的に業務用エアコンも取り扱いたい場合は、第一種の取得を目指しましょう。
ガス溶接技能講習
エアコンの配管工事では、気密性を保つために溶接作業を行います。溶接にはガスバーナーを使用するため、「ガス溶接技能講習」を受講する必要があります。
なお、ガス溶接技能講習においては、講習だけでなく「修了試験」も行われます。(※参考:ガス溶接技能講習規程(厚生労働省))
また、配管の接続作業や修理作業、再接続作業を行う際にも、講習の受講が必要になります。業務用エアコンでは配管の延長工事なども発生するため、業務の幅を広げるためにもおすすめです。
高所作業車運転特別教育
高所作業車運転特別教育とは、作業床が地上から高さ10m未満の作業者の運転操作ができる資格です。高さが10m未満の高所作業を操作するには、高所作業車運転特別教育を修了することが「労働安全衛生法」で義務付けられています。
商業施設や倉庫、学校などの高所でのエアコン設置には、高所作業車の使用が必要不可欠です。対象となる作業車は、下記のとおりです。
マンションやビルの外壁にエアコンの室外機を設置する際にも、高所作業車は使用されます。足場の設置が不要となるため作業効率が上がり、より多くの現場に対応できるようになります。
エアコン工事 独立後の年収は?収入アップの方法も解説
エアコン工事で独立した場合の年収は、およそ400〜1,000万円程度になります。なお年収額は、営業力や実績など、さまざまな要因により大きな幅があります。
独立後の収入を上げるためには、下記の3つのポイントが重要です。
■独立後の収入を上げるためのポイント
- 業務用エアコンの工事ができる資格を取得する
- 閑散期を活用して仕事を確保する
- 下請け業者を活用する
業務用のエアコン工事を行うには、特定の資格を取得する必要がありますが、家庭用のエアコン工事に比べて高単価です。多くの案件をこなせるため、実績作りにも役立ちます。
また、夏場の繁忙期は需要が集中しやすく競合も多くなるため、閑散期を活用した収益確保も欠かせません。
案件が増えて対応が難しくなった場合は、下請け業者も活用しましょう。リソースを超える案件も受けられるため、収益アップに繋がりやすいです。
ただし、下請け業者のスキルや品質も自社のイメージに直結します。下請けはあくまで補完的な手段と考え、自社の強みを失わないよう注意しましょう。
エアコン工事 独立で失敗しないためのポイント
エアコン工事での独立に成功するためには、技術力だけでなく営業活動や接客マナーも重要になります。独立で失敗しないためのポイントを3つに分けて紹介していきます。
営業活動をしっかり行う
独立後は、現場での作業だけでなく営業活動も自分で行う必要があります。技術力があっても、顧客を獲得できなければ事業は成り立ちません。新規顧客の獲得だけでなく、リピーターを増やすことも重要です。
■独立後の営業活動のポイント
- ターゲット層を明確にする
- 対象エリアを絞り込む
- 競合との差別化ポイントを見つける
専門性をアピールしターゲットを絞り込むことで、効率的な営業活動ができるようになるでしょう。
業務用エアコン取付のスキルを身につける
業務用エアコンの取り付けができれば、より高単価の案件を受注できるようになります。商業施設や工場、オフィスなどの法人が相手になるため、安定した収益を確保しやすくなります。
業務用エアコン工事を行うには、主に下記の資格が必要です。
■業務用エアコン工事で必要な資格
- 第一種電気工事士
- 冷媒フロン類取扱技術者
- 高所作業者運転技能講習
上記の資格は、技術力のアピールにも繋がるため、業務用エアコンの取付スキルを身につけておくとよいでしょう。
接客マナーに気をつける
エアコン工事はお客様と直接コミュニケーションを取る機会が多いため、接客態度も重要です。良い接客はリピートや紹介を生むきっかけにもなります。具体的には以下の点を意識して行いましょう。
■接客時の注意点
- 身だしなみを整える
- 笑顔で挨拶をする
- お客様の話をしっかり聞く
- 専門用語は使わず、わかりやすく説明する
- 言葉遣いに気をつける
特に、初対面の挨拶はその後のイメージに大きく関わるため、笑顔で挨拶をしましょう。また、質問内容をしっかりと聞き、分かりやすく説明すれば、悩みや不安の解消にも繋がります。
お客様から「頼んでよかった」「また依頼したい」と思われるような接客を心がけましょう。
まとめ
本記事では、エアコン工事で独立を考えている方に向けて、独立のメリットやデメリット、独立に必要な資格について解説しました。
- エアコン工事で独立するためには「1.電気工事会社に就職し技術を習得」「2.第二種電気工事士の資格を取得」「3.電気工事業者の登録を行う」「4.仕事を受注できる基盤を整えておく」ことが重要
- エアコン工事で独立するメリットは、「自由に働ける」「より高い収入を狙える」「仕事が多い」など
- エアコン工事の独立を成功させるためには「第二種電気工事士」「冷媒フロン類取扱技術者」「ガス溶接技能講習」「高所作業車運転特別教育」などを取得しておくのが効果的
エアコン工事は、リフォームや引っ越しでの交換作業など、年間を通じて需要があります。5〜9月にかけての繁忙期では、さらに需要が高まるため、仕事に困ることは少ないでしょう。
しかしながら、独立すると営業や接客などをすべて自分で行わないといけません。独立で失敗しないためには、技術だけでなく、営業活動や接客マナーに力を入れる必要があります。
エアコン工事で独立を目指している方は、本記事で解説した内容を参考にしながら、独立への準備を進めていきましょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
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