電験三種の「電力科目」とは?試験内容と効率の良い勉強方法を解説
電気主任技術者(電験)最終更新日:
電験三種の「電力科目」は、「発電所及び変電所の設計及び運転」・「送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用」・「電気材料」に関する内容が出題される科目です。
この記事では電験三種の試験4科目「理論・電力・機械・法規」のうち、「電力」の出題内容や勉強方法について解説しています。
これから電験三種の電力科目に初めて取り組む方にとって役立つ情報を集めました。
この記事をチェックして、効率的に合格を目指しましょう。
電験三種の「電力」科目とは?
電験三種の「電力」は、「発電所及び変電所の設計及び運転」・「送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用」・「電気材料」に関する内容が出題される科目です。
過去問を確認すると、電力科目では「暗記問題」と「計算問題」がほぼ同じ割合で出題されています。
電験三種の「電力」は、その他の科目と比べて得点を伸ばしやすい科目です。
学習内容もイメージしやすいことから、電験三種4科目の中では比較的勉強がしやすく、合格が狙いやすい科目といえます。
電力科目の試験内容と試験問題(例)
電験三種の電力科目の学習を始める前に、試験内容と過去問題を把握することが大切です。
ここでは、電力科目の試験内容と、過去に出題された問題を紹介します。
それぞれの内容をしっかりと理解し、効率的な学習計画を立てましょう。
電力科目の試験内容
電力科目の試験内容は以下の表の通りです。
■電力科目の試験内容
試験内容 | 詳細 |
---|---|
試験時間 | 90分 |
出題範囲 |
|
出題数 |
|
出題方式 | マークシート方式またはCBT方式 |
その他 |
開平機能(√)付きの電卓が使用可。 ただし、次の関数は使用不可。
|
※参考:第三種電気主任技術者試験
マークシート方式、CBT方式のいずれを選択しても、試験内容に大きな違いはありません。
出題される問題のうち、A問題が基本問題、B問題が応用問題です。
A問題が14問と、B問題が題ごとに2問ずつ出題されるため、合計で20問となります。
1問当たりの点数は5点で、合格基準点は基本的に60点です。
受験者の平均点数によっては合格点が調整され、60点以下でも合格となる場合もあります。
電力科目の試験問題(例)
電力科目で実際に過去に出題された問題を抜粋して紹介します。
2024年度上期試験で出題された問題です。
■出題例(1)
問題の解答:(3)
■出題例(2)
問題の解答:(4)
■出題例(3)
問題の解答:(2)
※出典:【問題】令和6年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目
電力科目では、暗記問題と計算問題がまんべんなく出題されます。
そのため、それぞれの用語の意味や、理論科目での電気理論などをしっかりと抑えることが重要です。
電力科目の合格率と難易度
電験三種の電力科目における過去5回分の平均合格率は27.4%です。
3人に2人は不合格となるため、しっかり勉強しなければ合格できません。
■電力科目の合格率と申込者数
年度 | 合格率 | 申込者(人) | 受験者(人) | 合格者(人) |
---|---|---|---|---|
平均 | 27.4% | 34,375 | 20,760 | 5,754 |
2023年度(下期) | 33.8% | 26,828 | 15,894 | 5,375 |
2023年度(上期) | 25.4% | 29,161 | 18,411 | 4,685 |
2022年度(下期) | 20.8% | 30,271 | 16,984 | 3,540 |
2022年度(上期) | 24.2% | 37,673 | 23,215 | 5,610 |
2021年度 | 32.6% | 47,943 | 29,295 | 9,561 |
他の科目との合格率の比較
電力科目の過去5回 平均合格率27.4%に対して、その他の科目の過去5回 平均合格率は約23%程度になっています。
他の科目と比べて、電力科目の平均合格率が比較的高いことが分かります。
■電力科目と他科目の合格率比較
科目 | 合格率 |
---|---|
電力 | 27.4% |
理論 | 23.5% |
機械 | 23.5% |
法規 | 23.6% |
他の電気系資格との合格率比較
次に電験三種の電力科目と他の電気系資格の難易度を比較しました。
人気の電気系国家資格同士で合格率を比較すると、電験三種の電力科目の難易度の高さが際立っていることが分かります。
■電験三種と他電気系資格の合格率比較
資格 | 合格率 |
---|---|
電験三種(電力) | 27.4% |
第一種電気工事士 | 学科:55.9% 技能:63.8% |
第二種電気工事士 | 学科:60.5% 技能:70.8% |
1級電気工事施工管理技士 | 第一次:42.2% 第二次:61.9% |
2級電気工事施工管理技士 | 第一次:54.2% 第二次:46.1% |
電力科目に合格するための勉強方法とコツ
ここからは、電験三種の電力科目のおすすめの勉強方法を解説します。
先に理論科目に対する知識を身につける
電力科目を効率的に学習するために、まずは理論科目の学習を通して基礎知識を身につけましょう。
理論科目は「電気理論、電子理論、電気計測、および電子計測に関するもの」が出題範囲になっています。
4科目の基礎となる知識を含んでいるのが特徴です。
電力科目には、理論科目の知識を使った問題も出題されます。
例えば、「電圧降下の算出」「変圧器の運転条件」などの問題は、理論科目の知識がなければ解くことができません。
理論科目の知識を抑えて、効率的に電力科目の学習を進めましょう。
テキストを一周する
理論科目の知識を押さえられたら、まずは電力科目のテキストを一周してみましょう。
効率的に学習するためには、分からないところが出ても止まらず、最後まで読み切ることが大切です。
■テキストを一周するメリット
- 電力科目の全体の内容が掴める
- 電力科目で出題される各項目の繋がりが体系的に分かる
分からないところの確認は2周目以降に行いましょう。
きっと2周目は1周目と比べてスムーズにテキストを読み進められるはずです。
1冊のテキストを繰り返し反復学習することで、知識の定着を図りましょう。
電力科目のテキストを複数使って学習することは効率の悪いNG行為です。
この記事内で「おすすめのテキスト」を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
電力科目で出題されやすい公式を覚える
電力科目を勉強する際には、電力科目で出題されやすい公式を暗記することも効果的です。
闇雲に公式を覚えるのではなく、出題されやすい公式に絞ることで、効率よく点数をアップさせられるからです。
この記事内で「電力科目でよく出題される公式一覧」を紹介していますので、こちらをご覧ください。
過去問を活用する
どの資格学習にも言えることですが、過去問をうまく活用しましょう。
過去問を活用するメリットとしては、以下が挙げられます。
■過去問を活用するメリット
- 出題傾向が把握できる
- 時間配分の練習ができる
- 自分が理解できていない分野を把握できる
- 問題形式に慣れることができる
電験三種は公式HPが過去問を公開しているほか、解説が充実した過去問題集も多く販売されています。
さらに、「工事士.com」でも過去問題をクイズ形式で掲載するコンテンツを公開しています。
電験三種の過去問題をクイズ形式で楽しみながら勉強いただけます。
電車での通勤時間や待ち時間の合間などに、気軽に試験勉強をしてみてください。
電力科目の合格に必要な勉強時間
実際に電験三種に合格した方に対して実施した当サイトのアンケート調査によると、電力科目の勉強時間(目安)は以下のとおりです。
■電力科目の勉強時間の目安
- 電気工学系・理系学部出身:100~200時間程度
- それ以外(文系学部など):200~300時間程度
電験三種は、中学・高校レベルの数学や理科の理解度によって必要な勉強時間に差が出ます。
数学・理科に不安がある方は、勉強時間を多めに見積もっておくと良いでしょう。
なお、電験三種全体では、電気工学系・理系学部出身で400~600時間、それ以外で600~800時間程度が勉強時間の目安となります。
必要な勉強時間が分かったら、1日に確保できる勉強時間から全体スケジュールを立てましょう。
電験三種の勉強は、毎日コツコツと続けることが大切です。
通勤や休憩時間などのすきま時間を利用して、時間をうまく使って学習を進めましょう。
電力科目でよく出題される公式一覧
電力科目でよく出題される公式一覧を以下にまとめました。
■電力(P)
- P:電力(W)
- V:電圧(V)
- I:電流(A)
- cosθ:力率
電力を計算する際に最も基本となる公式です。特に交流回路の場合は力率を考慮する必要があります。
■送電線の電圧降下
- ΔV:電圧降下(V)
- I:電流(A)
- R:抵抗成分(Ω)
- X:リアクタンス成分(Ω)
- cosθ:力率の実効成分
- sinθ:力率の無効成分
送電線における電圧降下を求めるための公式で、送電線のインピーダンスに影響されます。
■変圧器の一次側と二次側における電流と電圧の関係
- V1,V2:一次側と二次側の電圧(V)
- I1,I2:一次側と二次側の電流(A)
- N1,N2:一次側と二次側の変圧器のコイルの巻数
変圧器における電圧と電流、巻数の関係を表す公式で、理想的な変圧器を前提としています。
■短絡容量
- S:短絡容量(VA)
- V:電圧(V)
- Z:インピーダンス(Ω)
短絡電流が流れる際の電力容量を求める公式です。
■送電効率
- η:発電効率(%)
- P負荷:負荷側で得られる電力(V)
- P発電:発電側の電力(V)
送電時の効率を計算するための公式です。送電中の損失を考慮して、発電した電力がどの程度有効に使われているかを求めます。
電力科目の勉強におすすめのツール(Webサイト・テキスト・アプリなど)
電験三種の電力科目を効率的に学習するには、自分に合った学習ツールを活用することが重要です。
ここでは、電験三種の電力科目の学習で活用できる、Webサイト・テキスト・アプリを紹介します。
電験三種の電力科目では、100~300時間の勉強が必要です。各ツールをうまく活用し、効率よく学習を進めましょう。
おすすめのWebサイト
電験三種の電力科目の勉強におすすめのWebサイトは以下の3つです。
カテゴリー | サイト名 | 詳細 |
---|---|---|
受験情報・過去問 | 一般社団法人 電気技術者試験センター |
電験三種の試験実施機関のホームページ 受験案内の他にも過去問や試験に関するQ&Aなど、電気技術者に有益な情報を発信している |
過去問 | 工事士.com(電験三種 過去問クイズ) |
電気主任技術者の求人や転職情報を扱っている求人サイト 過去問クイズなどのコンテンツを無料で利用可能 |
基礎知識 | 基礎からわかる電気技術者の知識と資格 | 電気主任技術者の受験者向けに基礎知識や過去問題を分かりやすく解説 |
電験三種の試験問題を解説しているWebサイトは多数ありますが、一番のおすすめは「工事士.comの過去問コンテンツ」です。
工事士.comの「第三種電気主任技術者試験 過去問クイズ」では、過去に実際に出題された試験問題をクイズ形式で学習することができます。
また、掲載される過去問は過去15年分と膨大で、いずれも無料で利用可能です。
通勤・通学時間や、仕事の休憩時間などのすきま時間の有効利用に役立ててください。
その他におすすめのWebサイトは「基礎からわかる電気技術者の知識と資格 (e-sysnet.com)」です。
こちらのサイトでは、電験三種の合格に必要な基礎知識から科目ごとの試験内容まで、初心者でもわかりやすいように詳細に解説してくれています。
テキストで学習していて分からないことがあった場合や、項目ごとに重点的に学習したい場合などに活用してみてはいかがでしょうか。
おすすめのテキスト
電験三種の電力科目の勉強におすすめのテキストは、以下の2つです。
カテゴリー | テキスト名 | 特徴 |
---|---|---|
参考書 | 【これだけ】シリーズ | 初心者向けに基本的な内容から応用問題までをカバー |
過去問 | みんなが欲しかった!電験三種の10年過去問題集 | 直近10年分の過去問題が収録されており、解説が充実 |
電験三種の電力科目では、参考書や過去問題集といったテキスト中心に学習を進めましょう。
電験三種は受験者向けのテキストが多数出版されています。
ご自身の理解度に合った参考書や問題集を選ぶことが一番ですが、種類が多いと迷ってしまいますよね。
テキスト選びのポイントは以下のとおりです。
■テキスト選びのポイント
- 書店で実際に手に取って確認する
- 合格者の体験談や商品レビューをチェックする
- 参考書の特徴を理解する
- 最新の参考書を選ぶ
その他にもおすすめのテキストや参考書選びのコツは「電験三種の参考書選びのポイントとお勧めテキスト9点!」で紹介しています。
あなたに合ったテキストを見つけて、効率よく学習を進めていきましょう。
おすすめのアプリ
電験三種の電力科目の勉強におすすめのアプリは、以下の2つです。
アプリ名 | 対応OS | 詳細 |
---|---|---|
第三種電気主任技術者 試験問題演習アプリ | iOS |
練習問題を繰り返し学習できる 基本的に無料・有料で問題の追加購入が可能 Appストアの評価は4.6/5.0と人気のアプリ |
電験三種 電力科目 暗記アプリ(iOS用) | iOS |
電力科目の暗記問題に特化したアプリ 操作性が良く要点を効率的に学べる |
電験三種 電力科目 暗記アプリ(Android用) | Android |
アプリでの学習のみで電験三種の電力科目に合格することは難しいですが、すきま時間でのインプットを増やすには非常に有効なツールとなっています。
上手に活用して、インプットの量を増やしましょう。
まとめ
この記事では電験三種の4科目のうち「電力科目」について解説しました。
電力科目は、発電所及び変電所の設計及び運転・送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用・電気材料に関する内容が出題される科目です。
例年の傾向として知識問題と計算問題がほぼ同じ割合で出題されており、勉強量に比例して得点を伸ばしやすい科目です。
そのため、高難易度の電験三種の中では比較的合格率の高い科目といえます。
この記事で紹介した学習方法やおすすめのツールをぜひ参考にしていただき、効率的に学習を進めていきましょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
◆工事士.comについて
- 電気工事業界専門の求人サイトとして2012年にサービス開始
- 転職活動支援実績は10,000社以上
- 「電気工事士が選ぶ求人サイト」として「使いやすさ」「信頼度」「支持率」の三冠を獲得※
※調査元:ゼネラルリサーチ
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