フォークリフトの危険予知事例集!作業時の危険ポイントや安全対策も解説
安全衛生最終更新日:
フォークリフト作業関連の死傷災害は毎年発生しており、作業時の取り扱いには十分注意が必要です。
フォークリフトの事故を未然に防ぐために、実際に起きた事故事例について学び、同じような状況にならないよう対策をしましょう。
本記事では、フォークリフト作業での事故事例や、利用時に注意すべき点についてご紹介します。
ぜひ参考にしていただき、より安全な職場作りに役立ててください。
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フォークリフトの労働災害の実態
フォークリフトは、荷物を積み下ろし、運搬する産業車両です。
重い荷物や大量の商品を効率的に運べ、小回りが効くといったメリットから、幅広い業界で利用されています。
利便性の高いフォークリフトですが、毎年2,000件前後の労働災害が発生しています。
フォークリフト労働災害件数の推移は下記のとおりです。
※参考:フォークリフト事故統計の紹介 ―厚生労働省労働災害統計より―(一般社団法人日本産業車両協会)
フォークリフトによる死傷災害(休業4日以上または死亡に至った災害)は毎年一定の頻度で発生しています。
ちなみに、2023年に発生した労働災害の件数は1,989件でした。
次に、フォークリフトに起因する死傷災害の内訳を見ていきましょう。
以下の表は2019年から2023年までの5年間で発生した死傷災害の型別割合を示しています。
※参考:フォークリフト事故統計の紹介 ―厚生労働省労働災害統計より―(一般社団法人日本産業車両協会)
過去5年間のフォークリフト関連の事故類型では、「挟まれ・巻き込まれ」「激突され」が全体の6割を占めています。
ただし残りの4割の中にも様々な類型の事故が発生しているため、それぞれの類型に対しての対策が必要となるでしょう。
以上のことから、フォークリフト作業は死傷災害のリスクを伴う危険な作業であり、取り扱いには十分な注意が必要であると言えます。
フォークリフトの危険予知事例まとめ
危険予知活動(KY活動)は、職場や現場に潜む危険を洗い出し、事前に対策することで、事故発生を防止する活動のことを言います。
フォークリフト作業の事故を防止するためには、危険予知活動(KY活動)が有効です。
ここではフォークリフト作業の事故事例を以下6つのカテゴリーごとにご紹介します。
具体的な事故事例を知ることは、危険予知を考える上で参考になります。
ぜひ、同じような状況での事故を防止するヒントにしてみてください。
挟まれ
フォークリフト作業は狭いスペースで行われることも多くあるため、周囲の人が挟まれる事故が発生しています。
また、フォークリフトの可動域に挟まれる事故もあります。
したがって、フォークリフト関連の死傷災害の事例では「挟まれ」の割合が最も高く、注意が必要です。
フォークリフト作業における「挟まれ」の事故事例や原因は以下の通りです。
■ フォークリフト作業中に起きた「挟まれ」事故事例
状況 | 原因 |
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プレス機械の金型交換時に、プレス機械とフォークリフトに載せた金型の間に挟まれて死亡 |
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トラック荷台の扉を開けていた時、後退してきたフォークリフトとトラックの間に挟まれて死亡 |
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フォークリフトのマストと車体の間を通って運転席に戻ろうとしたところ、誤ってリフトレバーに触れ、マストとフォークに挟まれて死亡 |
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※参考:職場の安全サイト「労働災害事例」
フォークリフトと歩行者が交錯する状況では、挟まれ事故の確率が上がります。
そのため、作業指揮者を立てて、周囲の状況が確認できるようにすることが望ましいです。
また、フォークリフトを正しく操作できているか、作業手順を定期的に見直しましょう。
激突
フォークリフトは運転中の視界が悪いため、「激突」「激突され」の事故が頻発しています。
フォークリフト作業における「激突」の事故事例や原因は以下の通りです。
■ フォークリフト作業中に起きた「激突」事故事例
状況 | 原因 |
---|---|
ブレーキが故障している車両に乗務し、周囲の作業者に激突して死亡させる |
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パレットを前方が見えなくなるほど高く積んだ状態で走行し、歩行中の被災者に接触し負傷させる |
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配送する荷物の仕分け作業を行っていたフォークリフトが旋回した時、歩行中の作業者が轢かれる |
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※参考:職場の安全サイト「労働災害事例」
フォークリフト運転時に前方が見えにくい時は、後ろ向き走行で視野を広くとるように心がけましょう。
また、フォークリフト作業エリアと歩行エリアをしっかり区分してください。
フォークリフト接近を知らせるための警告灯設置も有効です。
墜落・転落
「墜落・転落」事故は死亡に至る事例が多く、フォークリフト作業においても例外ではありません。
フォークリフト作業における「転落・墜落」事故状況や原因は下記の通りです。
■ フォークリフト作業中に起きた「墜落・転落」事故事例
状況 | 原因 |
---|---|
未舗装道路をフォークリフトで走行中、路肩から下の畑に転落して死亡 |
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運搬した廃材を焼却場のピットに落とす作業中、フォークリフトと共にピット内に転落し死亡 |
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フォークリフトのフォーク上で換気用開閉引き戸の調整中に転落して死亡 |
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※参考:職場の安全サイト「労働災害事例」
フォークリフトの転落事故を防ぐためには、事前の作業・走行計画作成を欠かさずに行いましょう。
また、フォークリフトを利用した高所作業をやむを得ず行う場合は、十分な墜落防止措置が必要です。
転倒
フォークリフトには「転倒」災害が発生しやすい特性があります。
転倒災害が起きやすい原因は下記のとおりです。
■フォークリフト作業で転倒事故が起きやすい理由
- 過積載や偏積載によって重心の位置が変わるため
- 小回りが利くため急旋回が可能なため
フォークリフト作業における「転倒」事故事例や原因は以下の通りです。
■ フォークリフト作業中に起きた「転倒」事故事例
状況 | 原因 |
---|---|
偏荷重となったフォークリフトが横転し、誘導者が下敷きとなって死亡 |
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フォークリフトを運転中、曲がり角で転倒し、運転者が死亡 |
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長尺の木箱を運搬中のフォークリフトが横転し、運転者が死亡 |
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※参考:職場の安全サイト「労働災害事例」
フォークリフトで荷物を運搬するときは、荷物を安定した状態で積み、持ち上げたまま走行しないようにしましょう。
また、スピードの出し過ぎには注意し、ゆっくりした旋回を心がけてください。
落下
フォークリフト作業では積荷の落下に注意が必要です。
フォークリフト作業における「落下」事故事例や原因は以下の通りです。
■ フォークリフト作業中に起きた「落下」事故事例
状況 | 原因 |
---|---|
フォークリフトの積荷が落下し、パート作業者に激突 |
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フォークを踏み台とする用途外使用で荷物を積載中、落下した荷物の直撃で死亡 |
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フォークリフトの許容荷重を超えた荷を積載したため、落下した積荷の下敷きとなり死亡 |
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※参考:職場の安全サイト「労働災害事例」
フォークリフトで荷物を運搬するときは、許容荷重や積載状態を十分に確認してから作業しましょう。
崩壊・倒壊
フォークリフト作業では、積載作業や運搬中に荷物が「崩壊・倒壊」する危険があります。
フォークリフト作業における「崩壊・倒壊」事故事例や原因は以下の通りです。
■ フォークリフト作業中に起きた「崩壊・倒壊」事故事例
状況 | 原因 |
---|---|
魚介類等の冷凍保管庫においてフォークリフトで荷の搬出作業中、荷が崩壊して下敷きになり死亡 |
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フォークリフトで運搬中、ボックスパレットが崩壊し、休憩所にいた作業者にあたって死亡 |
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フレキシブルコンテナの荷崩し作業中、隣のコンテナが崩壊し下敷きとなって死亡 |
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※参考:職場の安全サイト「労働災害事例」
フォークリフト作業時には、荷物の積載状況には常に注意を払い、崩壊・倒壊する危険がないかを確認してから近づくように心がけましょう。
フォークリフト作業時の危険ポイントは?
フォークリフト作業を行う際、事故が起きないようにするには下記3つのポイントを注意する必要があります。
「フォークリフトの危険予知事例まとめ」でご紹介したフォークリフト関連の事故も、上記3つの危険ポイントが原因となっているケースが非常に多いです。
それぞれのポイントをしっかり押さえて安全にフォークリフトを利用しましょう。
1.積載重量とバランス
荷物の積載重量とバランスは、フォークリフトの重心に大きく影響します。
重心が不安定な状態で運搬すると、フォークリフトの転倒や積荷の崩壊・倒壊リスクが高まります。
荷物のバランスを安定させるために、注意すべき点は下記のとおりです。
■フォークリフトの積載時の注意点
- 荷物はパレットにしっかりと固定し、フォークに均等に積載する
- 最大積載重量を超えないように注意し、荷物を持ち上げる際はフォークが水平を保てるようにする
常に安定した積み方を心がけましょう。
なお、荷物はフォークの根元に近づけて積み、運搬時はフォークを少し下げた状態にすることで安定度が向上します。
2.視界の確保
フォークリフトは視界が制限されやすいため、運搬中に死角が生まれやすいです。
実際、視界の悪さに起因して、走行中の歩行者への「激突」「挟まれ」事故や、「転倒」「落下」「崩壊」といった事故が発生しています。
フォークリフトの視界の悪さを補うためには、以下の対策を検討しましょう。
■フォークリフトの視界の悪さを補う方法
- フォークリフトエリアと歩行者エリアを区分する
- 誘導員や指揮者を立てる
- クラクションやバックブザーを使用して、周囲にフォークリフトの存在を知らせる
- 徐行運転を心がけ、急ブレーキや急旋回は避ける
特にバック走行時や積み作業の際は、助手に誘導を依頼すると安全です。
3.定期的な点検
フォークリフトは定期的に点検やメンテナンスを行い、正常な状態で作業できるようにしましょう。
タイヤが擦り減っていたりブレーキの効きが悪い状態だと、運搬走行中に想定外の動きをする可能性があります。
「激突」「はさまれ」事故の発生につながりかねません。
したがって、フォークリフト使用前には、以下の項目をチェックしましょう。
■フォークリフト操作前に確認すべきポイント
- タイヤの空気圧や摩耗状況
- ブレーキの効き
- ライトやクラクションの作動
- 油圧箇所からのオイル漏れ
なお、異常が見つかった場合は、無理に作業を行わず、整備に回しましょう。
修理が終わるまでは使用不可とすることが大切です。
また、労働安全衛生法に基づく特定定期自主検査も忘れずに行いましょう。
【事故防止】フォークリフトを安全に扱うための対策は?
フォークリフトの事故を防止し安全に扱うためには、事前の対策が不可欠です。
フォークリフト作業の主な安全対策は、下記のとおりです。
■フォークリフト作業の安全対策
- 作業計画の作成
- 作業手順の遵守
- 作業指揮者や誘導員の配置
- 危険予知活動(KY活動)や危険予知トレーニング(KYT)の実施
フォークリフトを使用する場合は、作業計画や作業手順書の作成を必ず行いましょう。
作成の過程においては、危険となりうる箇所や手順がないかを検討していくことが大切です。
作成した計画書や作業手順は遵守するように心がけましょう。
また、フォークリフト作業の視野の狭さを補うためには、作業指揮者や誘導員を配置するのが望ましいです。
フォークリフト運転者の視界を補うことで、積荷の崩落や周囲の歩行者との接触などを避けることができます。
さらには、作業開始前に危険予知活動(KY活動)を行うことも有効です。
危険予知活動(KY活動)を行うことで、作業の危険を事前に察知することができ、事故発生の前に対策を打つことができます。
またKY活動の感度を高めるために、日ごろから危険予知トレーニング(KYT)を行うこともおすすめです。
KYTでは工事現場の様々なシチュエーションの画像や動画から、次に何が起きるかを考えます。
安全意識の向上に有効なので、チームで取り組んでみてください。
まとめ
本記事ではフォークリフトでの作業時における事故事例や注意すべき点についてご紹介しました。
- フォークリフトによる労働災害は、毎年2,000件前後発生している
- フォークリフト作業で特に発生しやすい事故は「挟まれ」「激突」「墜落・転落」「転倒」など
- フォークリフト作業時は、特に「積載重量とバランス」「視界の確保」「定期的な点検」に注意する
- フォークリフトを安全に扱うためには「作業計画の作成」「作業手順の遵守」「作業指揮者や誘導員の配置」「危険予知活動(KY活動)や危険予知トレーニング(KYT)の実施」などが重要
フォークリフトは利便性が高く簡単に運転できるイメージを持たれがちです。
しかし実際は、危険ポイントが多くあり、毎年死傷者が出ています。
事故の事例や危険ポイントを理解し、フォークリフトを正しく取り扱うように心がけましょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
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