高所作業の危険予知トレーニング(KYT)で使える事例まとめ!安全対策も紹介
安全衛生最終更新日:
高所作業での事故は、一歩間違えば人命に関わる重大な災害につながります。
建設業における労働災害の約38.6%が墜落・転落に起因しており、高所作業時の事故防止は最重要の課題と言えるでしょう。
さらに近年は、建設現場での工期短縮や人手不足により、安全対策が疎かになるケースも少なくありません。
本記事では、高所作業における危険予知と安全対策について、以下の観点から詳しく解説していきます。
まずは高所作業の定義と、そこに潜む危険性について知ることが大事です。過去の事故事例から学び、適切な対策を講じることができれば、重大な労働災害を防ぐことができるでしょう。
高所作業とは?
高所作業とは、労働安全衛生法により「地上または作業床から2メートル以上の高さで行う作業」と定められています。
具体的には、建設現場での足場の組立て作業や高層ビルの窓清掃、設備の保守点検など、多岐にわたる作業が該当します。
「2メートル」という基準が設けられている理由は、2mの高さからの転落・墜落事故が、人命に関わる重大な事故につながる可能性が高いためです。
実際、建設業の労働災害における死亡者数の38.6%が墜落・転落に起因した事故となっています。 (※参考:令和5年労働災害発生状況の分析等(厚生労働省))
そのため、厚生労働省では、高所作業における安全対策として「作業床の設置」「手すりの設置」「囲いの設置」などを定めており、以上の措置が困難な場合には「墜落制止用器具(安全帯)の使用」を義務付けています。
さらに2022年1月からは、2mを超える箇所で作業床を設けることが困難な場合、より安全性の高いフルハーネス型墜落制止用器具を着用することが原則となりました。また、フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育も併せて実施する必要があります。
(※参考:安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!(厚生労働省))
以上の安全対策を怠った場合、労働安全衛生法違反として罰則の対象となる可能性があるため、簡単な作業だからといって安全対策を怠ることは許されません。
高所作業で起こりやすい事故の種類は?
高所作業では、作業の種類や現場の状況によって様々な事故が発生する可能性があります。
建設業における事故の型別では、墜落・転落事故が最も多いため、高所作業は特に注意です。
高所作業における重大事故の種類は大きく3つに分類できます。
上記の事故は、作業前の点検不足や準備不足、一瞬の気の緩みから発生することが多いです。
人命に関わる重大な結果を招きかねない高所作業の事故について、具体的にどのような状況で発生するのか、詳しく見ていきましょう。
作業員の墜落・転落
作業員の墜落・転落事故は、死亡事故につながる可能性が特に高く、高所作業における最も危険な事故の一つです。
墜落・転落事故が発生する主な原因は、墜落防止措置が適切に実施されていなかったことに起因しています。
具体的な事例は、以下のとおりです。
■高所作業における「作業員の墜落・転落」事故事例
- 足場の組立作業中に安全帯を使用せずに転落
- 脚立の天板に乗って作業を行い、バランスを崩して転落
- 高所作業車のバスケット内で、体を乗り出して作業を行い墜落
墜落・転落の事故を防ぐためには、作業前の安全確認と適切な安全帯の使用が不可欠です。より安全性の高いフルハーネス型墜落制止用器具を着用したり、確実な装着と使用を心がけたりする必要があります。
また、万が一の墜落時に備え、救助用器具の設置場所の確認や救助訓練の実施など、緊急時の対応体制を整えておくことも重要です。
部品・工具などの落下
高所作業中の部品や工具の落下事故は、作業者本人だけでなく、下にいる作業員や通行人をも巻き込む危険性があります。小さな工具であっても、高所から落下すれば重大な事故につながる可能性があるでしょう。
部品・工具等の落下事故の主な原因として、工具の不適切な保管や取り扱いなどの人的要因に加え、強風などの外的要因も挙げられます。
具体的な事例は、以下のとおりです。
■高所作業における「部品・工具等の落下」事故事例
- ハンマーやドライバーを落とし、下にいた作業員に当たる
- 足場上に置いていた部品が振動で落下する
- 工具ホルダーの劣化により器具が抜け落ちる
部品・工具等の落下事故を防ぐためには、工具類への落下防止コードの取り付けや、部品の適切な保管、作業場所の整理整頓が重要です。
また、上下作業の回避や立入禁止区域の設定など、作業エリアの管理も欠かせません。
足場・高所作業車等の崩壊・転倒
足場や高所作業車の崩壊・転倒は、複数の作業員を巻き込む大規模な事故につながる危険性が高いです。
足場・高所作業車等の事故は、足場の設置や使用方法の不備、組立方法の誤り、地盤の不安定さ、許容重量の超過などによって発生することが多いです。
くさび緊結式足場や枠組足場では、主に組立・解体時の基準を守らなかったことによる崩壊事故が報告されています。
また、高所作業車については下記のような事故事例があります。
■高所作業における「高所作業車等の崩壊・転倒」事故事例
- 作業床を上げたまま移動して転倒
- アウトリガーの設置が不十分で転倒
- 傾斜地での無理な使用による転倒
上記の事故を防ぐためには、足場の組立て等作業主任者による適切な指示のもと、設置基準を遵守することが重要です。また、定期的な点検と不具合箇所の早期発見・改善も怠ってはいけません。
高所作業の安全対策例
高所作業における事故を防ぐためには、適切な安全対策の実施が不可欠です。
厚生労働省は、「作業床の設置」と「手すりや囲いの設置」を求めており、措置が困難な場合には「墜落制止用器具の使用」を原則としています。
具体的な安全対策は下記のとおりです。
以上の安全対策について、具体的な実施方法や対策について詳しく見ていきましょう。日々の作業で実践することで、重大な事故を未然に防ぐことができます。
墜落防止装置を使用する
墜落防止装置は、高所作業での昇降時や作業中の墜落事故を防ぐための重要な安全設備です。
主な装置として、スカイリトラやスカイロック、マンセーフシステムなどがあり、作業の種類や現場の状況に応じて適切な装置を選定する必要があります。
墜落防止装置は、作業者が誤って転落しそうになった際に、自動的に作動して墜落を防止する仕組みを持っています。
また、墜落防止装置を使用する際は、作業開始前の点検が欠かせません。
装置の固定状態や作動状況を確認し、不具合が見つかった場合は必ず修理や交換を行ってから作業を開始しましょう。
フルハーネス安全帯を使用する
2022年1月から、2mを超える箇所で作業床を設けることが困難な場合、高所作業時の安全帯は原則として「フルハーネス型」を使用することが義務付けられました。
なぜなら、従来の胴ベルト型では、墜落時に腹部へ衝撃が集中し、内臓損傷などの重篤な被害が発生する危険性があったためです。
フルハーネス型は、墜落時の衝撃を体全体に分散させる構造となっており、より安全性の高い墜落制止用器具として開発されました。
また、宙吊り状態になった際も、足が下向きの体勢を保てるため、長時間の救助待機にも対応できます。
使用する際は、装着前の点検と正しい装着方法の確認が重要です。
なお、フルハーネス型墜落制止用器具を使用する作業者は、厚生労働省が定める特別教育の受講が必要です。
部品・工具には落下防止対策を施す
高所作業で使用する部品や工具の落下は、作業者だけでなく下にいる作業員や通行人にも重大な危険を及ぼします。
そのため、落下を防ぐための対策は必須です。
具体的な対策方法は、下記を参考にしてください。
■部品・工具の落下防止対策
- 工具類には必ず落下防止用のストラップやコードを取り付ける
- ハンマーやドライバーなどの手持ち工具は、専用のホルダーに収納し身体に固定する
- ボルトやナットなどの小さな部品は、落下防止機能付きの工具バッグやポーチに入れて携行する
- 作業場所の下方には立入禁止区域を設定し、「立入禁止」「頭上注意」などの標識を設置する
以上の対策を確実に実施し、落下物による事故を未然に防ぐことが大切です。
また、悪天候時の対策も欠かせません。
強風時は工具の落下リスクが高まるため、気象条件に応じた作業中止基準を設定し、確実に運用するように努めましょう。
脚立・梯子をしっかり固定する
脚立や梯子は、最も身近な高所作業用の器具ですが、毎年数多くの労働災害を引き起こしています。
使用方法を誤ると重大な事故につながりかねないため注意が必要です。
安全に使用するためのポイントは、設置場所の確認です。
水平で安定した場所を選び、脚部には必ず滑り止めを施します。
脚立の場合は開き止め金具をしっかりと固定し、梯子は上端を60cm以上突き出して75度程度の角度で設置することも大切です。
(※参考:墜落災害防止のための移動はしごの使用方法等について(一般社団法人 全国建設業労災互助会))
また、脚立の天板に乗っての作業や、梯子から身を乗り出す行為は厳禁です。
荷物を持ちながらの昇降も避け、必ず両手を使って三点支持の状態を保ちながら作業を行ってください。さらに、昇降時や不安定な状況での作業時には、脚立や梯子を支える補助者を配置することも対策になります。
高所作業車などは正しく使用する
高所作業車は便利な機械ですが、使用方法を誤ると転倒など重大な事故につながります。
作業車を安全に使用するためには、運転資格の取得と正しい操作方法の理解が不可欠です。
高所作業車の運転作業に携わる際には、作業床の高さが10m未満の場合は特別教育、10m以上の場合は技能講習の修了が必要となります。 (※参考:高所作業車運転特別教育(一般社団法人 労働技能講習協会))
作業時には、必ずアウトリガーを適切に設置し、地盤の状態や傾斜を確認してください。作業床を上げた状態での移動や、作業床からの身の乗り出しは厳禁です。
また、定期的な点検と整備も重要になります。作業開始前には必ず作動確認を行い、異常が見つかった場合は修理が完了するまで使用を中止しましょう。
さらに、強風(10m/s以上)時は作業を中止したり、雨天時は感電防止措置を講じたりといった、気象条件への対応も必要になります。
高所作業車を利用する場合は、資格取得・点検や整備・気象条件への対応など、総合的な管理が重要です。
危険予知運転については「危険予知運転の事例13選。建設現場でのリスクも紹介します。」で詳しく解説しています。
高所作業の危険予知トレーニングに使える事故事例
高所作業の安全を確保するためには、過去の事故事例から学び、同様の事故を防ぐための危険予知能力を高めることが鍵になります。
特に「危険予知トレーニング(KYT)」は、作業開始前に起こりうる危険を予測し、適切な対策を講じるための効果的な手法です。
実際の事故事例を基に危険予知トレーニング(KYT)を行うことで、より具体的で実践的な安全教育となるでしょう。
この章では、下記の3つのカテゴリーに分けて事故事例をご紹介します。
各カテゴリーの具体的な事故事例と、対策について見ていきましょう。
工事現場の危険予知トレーニングについては「工事現場の危険予知トレーニング事例10選!建設業でのKYTの進め方も解説」で詳しく解説しています。
作業員の墜落・転落
作業員の墜落・転落事故は、一瞬の判断ミスや慣れによる油断から発生することが多いです。
ここからは、実際に発生した「作業員の墜落・転落」の典型的な事故事例を3つ取り上げます。各事例から、どのような危険が潜んでいるか、どんな予防策が考えられるのかを見ていきましょう。
ケース1.つり足場の解体中の墜落事故
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
高所作業での足場解体には、墜落・転落の重大なリスクがあります。
■発生状況
橋梁の拡幅工事現場で、つり足場の解体作業中に作業員1名が約8m下の増水した川に墜落し死亡。下段の足場から上段へ資材を運搬中に足を踏み外したことが原因。
■原因
- 移動時の墜落防止措置が不適切
- 20年以上のベテランによる慣れと安全帯使用の省略
- 作業計画における安全対策の不十分さ
- 統括安全管理の不足
■対策
- 防網の設置と安全帯の確実な使用の徹底
- 足場の組立て等作業主任者による作業手順の確認と監視
- 作業者へのライフジャケット着用の検討
- 元方事業者による関係請負人との連絡調整強化
- 作業場所の定期的な巡視と指導援助の実施
この事例からは、経験豊富な作業員でも慣れによる油断が重大災害につながることを学べます。
ケース2.うま足場の過荷重による複数作業員の墜落事故
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
うま足場を使用した高所作業では、足場の強度不足や過荷重による崩壊のリスクがあります。
■発生状況
天井の塗装工事現場で、うま足場上で作業中、作業者4名が同時に乗り、一方に片寄ったことで足場板が折れ、全員が墜落して負傷。当初予定の外壁塗装から雨天のため急遽変更した作業だった。
■原因
- 強度不足の足場を使用
- 最大積載荷重の未検討
- 安全帯使用のための設備不足
- 予定外作業による安全配慮の欠如
- 責任者への未連絡での作業変更
■対策
- 足場の最大積載荷重の設定と遵守
- 足場板の端部固定の徹底
- 墜落防止設備の設置と安全帯の確実な使用
- 安全衛生教育の実施
- 作業変更時の責任者への報告と指示確認
この事例からは、予定外作業での安全配慮の重要性と、作業変更時の適切な判断・連絡の必要性を学べます。
ケース3.張り出し足場解体作業中の墜落死亡事故
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
張り出し足場の解体作業では、手すりの取り外しに伴う墜落のリスクがあります。
■発生状況
橋梁建設工事現場で、作業員が張り出し足場の解体作業中に河床へ墜落し死亡。手すり用単管の取り外しや移動時にバランスを崩したと推測される。
■原因
- 墜落防止措置の未実施
- 安全帯の未使用
- 足場の組立て等作業主任者の未選任
- 作業手順の未策定
- 元請の統括管理体制の不備
■対策
- 親綱の設置と命綱の確実な使用
- 足場の組立て等作業主任者による直接指揮
- 作業手順の作成と事前教育の実施
- 元請による関係事業者の統括管理強化
- 定期的な作業場所の巡視と指導
この事例からは、手すりを取り外す作業では、代替の墜落防止措置を確実に実施する必要性を学べます。
部品・工具等落下の事故例
部品や工具の落下事故は、一見小さな工具でも高所から落下すれば重大な事故につながります。
ここからは、実際に発生した「部品・工具等落下」の典型的な事故事例を3つご紹介します。各事例から、どのような危険が潜んでいるのか、どう防ぐべきかを考えていきましょう。
ケース1.高所から電動工具が落下し、作業者にあたりそうになった
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
高所での電動工具使用時には、工具の落下による作業者への危険があります。
■発生状況
製造工場の二階吹き抜け部分で、暖房機の組立作業中、作業員が手すりの隙間から電動ドライバーを落下させ、下階の作業者に当たりそうになった。幸い直撃は免れたが、重大事故につながりかねない事例だった。
■原因
- 工具への落下防止措置の未実施
- 作業場所の危険性認識不足
- 上下作業の未調整
- 手すりの隙間対策の不備
■対策
- 工具への落下防止コードの取り付け
- 工具使用時の保持確認の徹底
- 上下作業の禁止と作業区域の明確化
- 手すり周辺への防護ネットの設置
- 作業開始前の危険予知活動の実施
この事例からは、高所作業時の工具管理の重要性と、上下作業の危険性を再認識することができます。
ケース2.2階足場から1階通路への工具類の落下
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
上下作業時における工具の落下は、下部で作業する作業員に重大な危険をもたらします。
■発生状況
ボイラー設備の定期修繕作業中、2階足場で作業していた作業員がパイプレンチやL型パイプを誤って落下させ、1階で灰出し作業を行っていた作業員の直近に落下。重大な事故につながりかねない事例だった。
■原因
- 上下作業の未回避
- 作業時間の調整不足
- 落下防止措置の未実施
- 作業手順の不明確さ
■対策
- 原則として上下作業の禁止
- やむを得ない場合の作業時間の調整
- 防護ネットなどの落下防止措置の設置
- 作業手順書の整備と作業員への周知徹底
- ツールストラップの使用義務化
この事例からは、上下作業の危険性と、作業計画段階での安全配慮の重要性を学べます。
ケース3.足場材が落下し、歩行者にぶつかりそうになった
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
足場解体作業では、部材の落下による作業員や通行人への危険があります。
■発生状況
工事現場の足場解体作業中、腕木材を取り外す際に地上へ落下。落下防止ネットの固定不備により、部材が道路上まで落下し、歩行者に接触しそうになった。
■原因
- 腕木材の固定状態の誤認識
- クランプの取り外し手順の誤り
- 落下防止ネットの不適切な設置
- 作業前の安全確認不足
■対策
- 作業開始前の落下防止ネットの設置状態確認
- 部材の固定状態の入念な確認
- 解体手順の明確化と徹底
- 公衆災害防止のための通行止めの実施
- 作業指揮者による監視体制の強化
この事例からは、足場解体時の部材管理と第三者への安全配慮の重要性を学べます。
足場・高所作業車等の崩壊・転倒の事故例
足場や高所作業車の崩壊・転倒事故は、一度発生すると複数の作業員を巻き込む大規模な災害につながります。
事故の主な原因は、設置基準の不遵守、点検不足、作業手順の無視などが挙げられます。
ここでは、実際に発生した「足場・高所作業車等の崩壊・転倒」の典型的な事例を3つご紹介します。事例を通じて、崩壊・転倒を防ぐために必要な対策と、作業前の確認事項を学んでいきましょう。
ケース1.外壁改修工事での足場崩壊による集団被災事故
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
外壁工事用の大規模足場では、強風による崩壊のリスクがあります。
■発生状況
建物の外壁改修工事現場で、高さ20.9m、長さ89mの大規模足場が崩壊。昼食休憩のため足場を降りようとしていた作業員5名が巻き込まれ負傷。前日には設計風速を超える強風が観測されていた。
■原因
- 壁つなぎと外壁接続アンカーの強度不足
- 強風時のメッシュシート畳み等の未実施
- 作業開始前の点検不足
- 悪天候予報への対応遅れ
■対策
- アンカー強度の事前検討と適切な設置間隔の確保
- 代替接続方法の事前検討
- 強風予報時の風荷重軽減措置の実施
- 作業開始前の足場点検と補修の徹底
この事例からは、大規模足場の設置における事前検討の重要性と、気象条件への対応の必要性を学べます。
ケース2.作業構台の設計不良による倒壊死亡事故
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
作業構台での資材仮置き作業には、構台の崩壊・倒壊のリスクがあります。
■発生状況
橋梁補修工事現場で、吊り足場用部材を作業構台上に仮置き中に構台が倒壊。作業者2名が巻き込まれ、1名が死亡、1名が負傷。部材仮置きの途中で構台の変形が確認されていたにもかかわらず、作業を継続していた。
■原因
- 筋交いの未設置による構造強度不足
- 最大積載荷重の未設定と未周知
- 組立図の未作成による不適切な施工
- 異常発見時の作業継続
- 軟弱地盤への対策不足
■対策
- 組立前の強度計算と組立図の作成
- 最大積載荷重の設定と明示
- 異常時の即時作業中止と補強措置
- 元請による設計図書の安全性確認
- 日常的な危険性確認の実施
この事例からは、作業構台設置における事前検討の重要性と、異常発見時の迅速な対応の必要性を学べます。
ケース3.小屋組据付時の倒壊による複数作業員の墜落事故
※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
木造建築工事の小屋組据付作業では、構造物の倒壊による墜落のリスクがあります。
■発生状況
木造平屋建築工事現場で、クレーンで吊り上げた小屋組の据付作業中に構造物が突然倒壊。小屋組上で作業していた5名のうち4名が墜落して負傷。作業者は安全帯を着用しておらず、足場や防網も未設置だった。
■原因
- 作業計画の未作成
- 施工要領書と異なる施工方法
- 仮の筋交いの未設置
- 作業床や墜落防止措置の不備
- 安全帯の未着用
■対策
- 事前の危険性評価と作業計画の策定
- 施工要領書に基づく確実な組立作業
- 足場先行工法による作業床の設置
- 墜落制止用器具の確実な使用
- 作業手順の周知徹底
この事例からは、施工要領書の遵守と墜落防止措置の重要性を学べます。
まとめ
本記事では、高所作業で起きやすい事故や安全対策、危険予知トレーニングに使える具体的な事故事例などを詳しく解説してきました。
- 建設業の死亡災害のうち、約38.6%を墜落・転落事故が占める
- 高所作業(2メートル以上)で起こる主な事故は「作業員の墜落・転落」「部品・工具の落下」「足場等の崩壊・転倒」など
- 高所作業における安全対策は「墜落防止装置・フルハーネス安全帯の使用」「部品・工具に落下防止対策を施す」「脚立・梯子をしっかり固定する」「高所作業車は正しく使用する」など
高所作業の安全確保には、作業床の設置や手すり・囲いの設置、墜落制止用器具の使用など、適切な対策が欠かせません。
また、実際の事故事例から学ぶ危険予知トレーニングを通じて、作業員の安全意識を高めることも重要です。
本記事で紹介した事例や対策を参考に、作業前の安全確認や適切な保護具の使用を徹底することで、重大な労働災害を防ぐことができます。危険予知や安全対策を通じて、安全な職場を目指しましょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
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