【玉掛け作業の危険予知】333運動や基礎4ラウンド法など基本知識から実践向けの具体例まで

安全衛生

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玉掛け作業は、クレーンを使用して重量物を吊り上げ・運搬する作業で、工事現場や工場での物流に不可欠な作業です。しかし、一歩間違えると重大な事故につながるリスクを常にはらんでいます。


電気工事の現場でも、大型の変圧器や配電盤の設置作業時に玉掛け作業が必要となることがあります。

電気工事士にとっても、玉掛け作業の安全確保と危険予知(KY活動)は重要なスキルです


本記事では、玉掛け作業の基本から実践的な安全対策、効果的な危険予知活動(KY活動)の進め方まで、詳しく解説していきます。


作業現場の安全を守るため、ぜひ参考にしてみてください。


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玉掛け作業と危険予知の基本知識

玉掛け作業は、クレーンやデリック等を使用して荷を吊り上げ・運搬する際に、ワイヤーロープやフックを使って荷物を固定する一連の作業を指します。


また、玉掛け作業を行うには資格が必要で、クレーンの吊り上げ荷重によって異なります。

1トン以上の場合は「玉掛け技能講習」の修了、1トン未満の場合は「玉掛け業務特別教育」の修了が必要です。無資格での作業は法令違反となり、重大な事故につながる可能性があります。


玉掛け作業の基本的な手順は、以下のとおりです。

■玉掛け作業の基本手順

  1. 荷掛け作業:荷物にワイヤーロープを掛ける
  2. 玉掛け作業:クレーンで荷物を移動させる
  3. 荷外し作業:荷物からワイヤーロープを外す


さらに、作業開始前に以下の危険予知を行えば、より安全に作業を進めることができるでしょう。

■玉掛け作業開始前の危険予知活動

  • ワイヤーロープの状態(キンクや摩耗の有無)
  • クレーンの設置状態(アウトリガーの適切な設置)
  • 作業範囲の安全確認(立入禁止区域の設定)
  • 作業者の体調管理(疲労や体調不良の確認)

以上の基本知識を踏まえ、作業者一人一人が安全な作業手順を守ることが、事故防止の第一歩となります。


玉掛け作業で発生しやすいリスク

玉掛け作業には、重大な事故につながるリスクが潜んでいます。


厚生労働省が発表している「令和3年におけるクレーン等 の災害発生状況」のデータを見ると、1,644人の死傷者が出ています。

令和3年におけるクレーン等の災害発生状況

※引用元:厚生労働省「令和3年におけるクレーン等の災害発生状況」



特に件数が多いのが「落下」「つり荷による挟圧」「激突」の3つです

これらの事故は、作業者の不安全行動や作業手順の不備が原因となって発生しています。


以下、代表的な事故のパターンと、その予防策について詳しく見ていきましょう


【落下】鉄板がフックから外れ落下

落下事故

※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

車両積載型クレーンによる鉄板の積込み作業には、フックからの落下リスクがあります。


【実例】

■ 発生状況

車両積載型移動式クレーンで鉄板(6.1m×1.5m×20mm、約1.76t)を荷台に積込み中、鉄板がフックから外れて落下。補助作業を行っていた作業者が激突され死亡。

■ 原因

  • 外れ止めのないフック付きワイヤーロープを使用
  • 鉄板の2つの穴に対し1本のワイヤーロープで1点つりを実施
  • アウトリガー下の角材破損による荷振れを確認しながらも作業を継続

■ 対策

  • 作業計画の事前策定と作業者への周知徹底
  • 外れ止め付きフックの使用と適切な本数の玉掛け用具確保
  • 有資格者による作業実施と安全衛生教育の徹底
  • 荷振れ発生時の作業中止判断


【落下】荷が落下して下敷きになった

落下事故による負傷

※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

コンクリート製品工場でのクレーン作業には、養生不足による製品落下のリスクがあります。

【実例】

■ 発生状況

コンクリート製品工場で、型枠を外したボックスカルバートをクレーンで運搬し、保管場所で回転作業中に専用吊り具のピンが抜け、製品が落下。作業者が下敷きとなり死亡。

■ 原因

  • 養生時間不足によるコンクリート強度不足
  • 吊り具のピンに抜け落ち防止装置を未使用
  • 作業者が荷の落下危険範囲内で作業を実施
  • 作業手順の基準が未整備

■ 対策

  • 生産計画に応じた十分な養生時間の確保
  • 安全な回転作業方法と落下防止機能付き吊り具の採用
  • 危険区域への立入禁止の徹底
  • 安全作業基準の策定と確実な実施


【吊り荷による挟圧】手の指を挟まれそうになった

吊り荷による挟圧

※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

クレーンによる玉掛け作業には、クレーン操作と玉掛け作業の連携不足による挟まれのリスクがあります。

【実例】

■ 発生状況

資材置き場内で、クレーンオペレーター1名と玉掛け作業者1名でケーシングの吊上げ作業中、クレーン操作のタイミングが合わず、玉掛け作業者の手指がワイヤーとケーシングの間に挟まれそうになった。

■ 原因

  • 作業者間の声掛けによる意思疎通が不十分
  • 吊上げ開始時の合図が不明確

■ 対策

  • 作業者間の頻繁な声掛けの徹底
  • 吊上げ開始時の手信号等による明確な合図の実施
  • クレーン操作と玉掛け作業の連携手順の確立


【激突】吊り荷が激突しそうになった

吊り荷との激突

※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

クレーンによる荷下ろし作業には、つり荷の旋回による激突のリスクがあります。

【実例】

■ 発生状況

木造家屋建築工事で、トラックから資材置き場に木材を荷下ろし中、クレーンのつり荷が旋回して玉掛け作業者に激突しそうになった。

■ 原因

  • つり荷の揺れと旋回を制御できていなかった
  • 作業者がつり荷に近い位置で作業を実施

■ 対策

  • つり荷から安全な距離を確保した作業位置の徹底
  • 介錯ロープを使用した荷振れ制御の実施
  • 玉掛け作業者の立入禁止区域の明確化


【激突】フレコンバッグが頭に当たった

フレコンバッグの激突

※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

トラッククレーンによるフレコンバッグの吊上げ作業には、荷振れによる激突のリスクがあります。

【実例】

■ 発生状況

廃棄物処理場で、プラスチック廃材を入れたフレコンバッグ(約82kg)をトラッククレーンで約2m吊上げてブームを回転させた際、荷が大きく揺れ、地切り作業者の頭部に激突。作業者は荷とトラックのアオリ板の間に挟まれた。

■ 原因

  • 荷振れ防止対策が不十分
  • つり荷の近くで作業を実施
  • 作業手順の不備

■ 対策

  • 介錯ロープによる荷振れ制御の徹底
  • つり荷の動線からの作業者の離隔確保
  • 作業手順の明確化と遵守


玉掛け作業の安全対策は?

玉掛け作業の安全確保には「333運動」と呼ばれる、3つの基本原則を徹底する必要があります。

なぜなら、玉掛け作業における事故の多くは、基本的な安全対策の不備により発生しているからです。


「333運動」の3つの基本原則は、以下のとおりです。


■333運動の概要

項目 内容
3メートル
  • つり荷から3メートル以上離れる
  • 安全な離隔距離を確保する
  • つり荷の落下や荷振れによる危険を回避する
  • 立入禁止区域を明確に設定する
3秒
  • 作業開始前に3秒間の安全確認を行う
  • 周囲の作業者の位置を確認する
  • 玉掛け用具の取付け状態を確認する
  • クレーンの設置状態を確認する
30度
  • 玉掛け角度は30度以内を厳守する
  • 適切な玉掛け用具を選定する
  • 重心位置を確実に確認する
  • 荷崩れ防止を徹底する

以上の基本原則に加えて、以下の対策も重要です。

  • 作業者間の合図を決める
  • 異常時は即時作業を中止する
  • 作業手順を事前に確認する

333運動を基本的な対策として、以上の対策を確実に実施することで、玉掛け作業における重大災害を防ぐことができます。


玉掛け作業の危険予知活動の具体例は?

効果的な危険予知活動(KY活動)を実施するには、作業別の具体的な事例に基づいて、基礎4ラウンド法を実践することをおすすめします。


玉掛け作業における基礎4ラウンド法は、以下の手順で進めましょう。


項目 実施内容
1.現状把握(第1R) 「どんな危険が潜んでいるか」
  • ワイヤーロープの老朽化による切断の可能性
  • つり荷の重心位置の誤認による荷崩れの可能性
  • 作業者の不適切な位置取りによる挟まれの可能性
2.危険予測(第2R) 「これが危険のポイントだ」
  • ワイヤーロープの点検不足
  • 作業手順の確認不足
  • 安全な退避位置の未確保
3.対策立案(第3R) 「あなたならどうする」
  • 作業前の玉掛け用具の点検実施
  • つり荷の重量と重心位置の確認
  • 「333運動」の徹底(3メートルの安全距離、3秒の確認、30度以内の玉掛け角度)
4.行動確認(第4R) 「私たちはこうする」
  • 全員で指差し確認「玉掛け用具ヨシ!重心位置ヨシ!安全距離ヨシ!」

以上の手順を実際の事例に落とし込んで、見ていきましょう。


H鋼の玉掛け作業

H鋼の玉掛け作業

※引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

【作業内容】

天井クレーンを使用してH鋼(長さ8m、重量800kg)を玉掛けし、移動する作業。


1.現状把握/2.危険予測

重要度 危険予測
劣化したワイヤーロープを点検せずに使用し、つり荷が落下して作業者が下敷きになる
1本のワイヤーロープで2点つりという不安定な玉掛け方法で、つり荷が落下する
作業者がつり荷に近づきすぎて、落下したH鋼に巻き込まれる
無資格者が玉掛け作業を行い、誤った方法で作業して事故につながる

3.対策立案

重要度 対策案
作業開始前にワイヤーロープの点検を実施し、キンクや型崩れがあるものは使用しない
H鋼のサイズに適した本数のワイヤーロープを使用し、安定した玉掛け方法を選択する
つり荷から十分な安全距離を確保し、作業者の立入禁止区域を明確にする
玉掛け作業は必ず有資格者が実施する

※は重点実施項目

4.行動確認

チーム行動目標 指差し呼称
玉掛け用具の点検と安全な作業方法を徹底しよう 玉掛け用具ヨシ!作業方法ヨシ!安全距離ヨシ!

まとめ

本記事では、玉掛け作業における安全対策と危険予知活動(KY活動)について詳しく解説してきました。

この記事のまとめ
  • 玉掛け作業は、クレーンでの荷物の吊り上げ・運搬に不可欠な作業だが、重大事故につながるリスクがある
  • 作業に必要な資格は、クレーンの吊り上げ荷重によって異なり、1トン以上は技能講習、1トン未満は特別教育の修了が必要
  • 事故防止には「333運動」の徹底が重要(3メートルの安全距離確保、3秒間の安全確認、30度以内の玉掛け角度)
  • 危険予知活動は基礎4ラウンド法(現状把握→危険予測→対策立案→行動確認)で実施し、全員参加で進める

玉掛け作業の安全確保には、基本的な作業手順の遵守と、効果的な危険予知活動が欠かせません。


この記事で紹介した危険予知活動の方法を確実に実施することで、重大災害を未然に防ぎましょう。


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