ヒヤリハット事例集|各業界の事例から学んで安全管理を徹底しよう!
安全衛生最終更新日:
ヒヤリハットとは、業務中において「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたり、幸運にも事故に至らなかった状態を指します。
あらゆる職場で、日々さまざまな「ヒヤリハット」が発生しています。
転倒や墜落、重機との接触など、一瞬の油断が命に関わる事故に繋がりかねません。
重大事故は突発的に起こるのではなく、小さな危険の積み重ねによって引き起こされます。
本記事では、ヒヤリハットの基本的な考え方から、業種別の具体的な事例、報告方法・対策の立て方まで、安全な職場づくりに役立つ情報を詳しく解説していきます。
それでは、ヒヤリハットの目的と役割について詳しく見ていきましょう。
ヒヤリハットとは?目的と役割をチェック
ヒヤリハットとは、重大な事故や災害には至らなかったものの、一歩間違えば事故に繋がりかねない事象のことです。
例えば、以下のようなものがヒヤリハットに該当します。
■ヒヤリハットの具体例
- 機械を止めずに修理しようとして、手を挟みそうになった
- 安全帯を着けずに足場に登って転落しそうになった など
ヒヤリハットの活動の目的は、重大事故の予防です。
「ハインリッヒの法則」によると、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、その背景には300件のヒヤリハットが存在するとされています。
つまり、ヒヤリハットを把握・分析し、適切な対策を行うことで、深刻な事故を未然に防ぐことができます。
ヒヤリハット活動の主な役割は、以下の4つです。
■ヒヤリハット活動の主な役割
- 事故の予兆を把握し、未然防止につなげる
- 作業手順やルールの見直しに活かす
- 従業員の安全意識を高める
- 同じような事故の再発防止に役立てる
また、ヒヤリハットを報告・分析することで、職場全体で危険に対する認識を共有できるため、安全対策に取り組む企業の風土づくりにもつながるでしょう。
ヒヤリハットの活動は、安全で健全な職場環境を作る上で重要な取り組みです。
ヒヤリハットについて詳しく知りたい方は「ヒヤリハットとは?職場の安全意識を高める活用方法を解説」をご覧ください。
ヒヤリハットの事例集
ヒヤリハットは、業種や作業内容によってさまざまな形で発生します。ここからは、代表的な業種別のヒヤリハット事例をご紹介します。
事例を事前に知っておくことで、自分の職場で起こりうる危険を予測し、事故を未然に防ぐことができるでしょう。それでは、業種別の具体的な事例を見ていきます。
製造業(工場等)のヒヤリハット
製造業の現場では、機械設備の操作や重量物の運搬など、多くの危険が潜んでいます。代表的なヒヤリハット事例をご覧ください。
搬送用コンベアに手が挟まれそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
搬送コンベアを稼働させたまま清掃しようとしたため、清掃用のウェスがコンベアに巻き込まれ、焦って手も挟まれそうになった。
■原因
- ベルトコンベアを停止せず、ウェスで清掃したため
■対策
- 機械を確実に停止させた状態で、清掃を行うことを徹底する
フォークリフトと衝突しそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
原料用の空箱をフォークリフトで運搬中、シャッター付近で一時停止を怠ったため、脇から横断しようとした作業者と接触しそうになった。
■原因
- シャッター前での一時停止ルールを遵守せず、周囲の安全確認を怠ったため
■対策
- シャッター通過時の一時停止と指差呼称による安全確認の徹底
- フォークリフトと作業者の動線を可能な限り分離する
工場のヒヤリハット事例についてさらに詳しく知りたい方は「工場のヒヤリハット事例まとめ!原因や事故を防ぐための対策方法も解説」をご覧ください。
建設業のヒヤリハット
建設現場では、高所作業や重機の使用など命に関わる危険が日常的に存在します。以下の事例から、重大事故を防ぐポイントを確認しましょう。
足場の作業床でつまづき転倒しそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
足場の作業床を移動中、放置されていた結束用の番線に足を取られ、転倒の危険があった。幸い近くの筋交いに掴まり事なきを得た。
■原因
- 作業床上に不要な部材(番線)を放置したまま、十分な整理整頓がされていなかったため
■対策
- 足場は段差のない安全な状態に組み立てる
- 作業床の定期点検を実施し、不要な部材は速やかに撤去する
移動式クレーンが転倒し、ジブがぶつかりそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
25トン移動式クレーンで鉄骨材を吊り下ろし作業中、クレーンが不安定となり転倒。ジブ(アーム部分)が作業者に接触する危険があった。
■原因
- コスト削減のため、必要能力以下の小型クレーンを使用していた
- オペレーターが過負荷防止装置を解除し、クレーンの許容重量を超える作業を行っていた
■対策
- 作業内容に適した能力のクレーンを選定する
- 過負荷防止装置の稼働状況を定期的に確認し、安全装置の無効化を防止する
事務所・オフィスのヒヤリハット
オフィスは製造現場と比べると安全に見えますが、実はさまざまな危険が潜んでいます。身近に起こりうるヒヤリハット事例を見てみましょう。
資料を取ろうとして、椅子から転落しそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
2.5メートルの高さにあるキャビネットから資料を取ろうとして、キャスター付きの椅子に乗った際、椅子が滑り出しバランスを失って転落の危険があった。
■原因
- 高所作業に不適切なキャスター付き椅子を踏み台として使用したため
■対策
- 高所作業時は専用の踏み台や安全な脚立を使用する
- キャビネットは耐震対策として壁に固定する
- よく使う資料は手の届く高さに収納する
コピー用紙を中腰で取り出そうとして、よろめいた
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
事務用品倉庫にてコピー用紙の補充作業中、中腰の姿勢で重い箱を持ち上げようとした際に、バランスを崩し腰痛になりかけた。
■原因
- 不適切な姿勢(中腰)で重量物を持ち上げようとしたため
■対策
- 重い物を持ち上げる際は膝を曲げて上体を起こした姿勢を保つ
- 台車を活用し、運搬時の負担を軽減する
介護職のヒヤリハット
介護現場では、利用者の安全と職員の安全、両方への配慮が必要です。日常的に起こりやすい介護現場のヒヤリハット事例をご覧ください。
入浴介助中、利用者を抱える際に腰を痛めそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
入浴介助にて利用者が自力で立ち上がれない状況となり、介助者が1人で浴槽内に入って抱え上げようとした際、腰部に強い負担がかかった。
■原因
- 浴槽内という狭い空間で、不安定な姿勢のまま利用者を持ち上げようとしたため
■対策
- 介助時は腰に負担のかからない適切な姿勢を維持する
- 状況に応じて複数の職員で介助を行い、負担を分散する
- 必要に応じて福祉用具(入浴用リフトなど)の活用を検討する
起床介助中、車椅子へ移乗させる際に腰を痛めそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
介護施設での起床介助時、布団から車椅子への移乗を一人で行おうとして利用者を抱え上げた際、介助者の肋骨部分に過度な負荷がかかった。
■原因
- 一人での作業を強行し、身体への負担が大きい不適切な姿勢で移乗介助を行ったため
■対策
- 移乗介助は原則2人以上で対応する
- スライディングボードなどの移乗補助具を活用する
- 適切な介助技術の習得と実践を徹底する
運転中・通勤時(交通関連)のヒヤリハット
通勤時や業務での運転中は、一瞬の判断ミスが重大な事故につながる可能性があります。交通事故を防ぐため、以下の事例から学びましょう。
交差点で人をひきそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
物品搬送中、交差点にて歩行者用信号が青に変わったのを見て発進しようとした際、横断歩道を渡る歩行者と接触しそうになり、急ブレーキをかけた。
■原因
- 歩車分離式信号の仕組み(歩行者用信号が青の時は車両用信号が全て赤になる)を理解していなかった
- 車両用信号の確認を怠った
■対策
- 歩車分離式信号機の設置場所を地図に記載し、ドライバーへ周知徹底
- 車両用と歩行者用、両方の信号を必ず確認してから発進する
電柱との間に挟まれそうになった
※引用元:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
■ヒヤリハットの状況
家具配送時、狭路で左折できず後退を余儀なくされた際、後方で誘導していた補助員が、トラックと電柱の間に挟まれそうになった。
■原因
- 道幅の狭い一方通行で後退作業を実施していた
- 運転手が誘導者の位置を目視確認せずに後退操作を行った
- 事前の経路確認が不十分だった
■対策
- 配送ルートは事前に道幅や転回スペースを確認し、適切な経路を選定する
- 後退時は必ずバックモニターや無線機を使用し、誘導者の安全を確保する
- 誘導者は車両と構造物の間に入らない安全な位置で誘導を行う
ヒヤリハットの事例集を集めたサイト
ヒヤリハット事例をより詳しく知りたい方のために、参考となるサイトをご紹介します。
厚生労働省が運営している、職場の安全衛生に関する総合的な情報を提供するウェブサイトです。
■厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
項目 | 内容 |
---|---|
事例数 | 400件以上の事例が掲載 |
業種 | 製造業・建設業・介護など、業種ごとに特化した事例が掲載 |
対策 | ヒヤリハットごとに具体的な対策を提案 |
特徴 | 社内教育にも使用できるPDFのダウンロードが可能 |
料金 | 誰でも無料でアクセスができ、幅広い情報を入手可能 |
全日本トラック協会は、「WEB版ヒヤリハット集」をホームページ上で公開しています。
■全日本トラック協会「Web版 ヒヤリハット集」
項目 | 内容 |
---|---|
事例数 | 380件以上の事例が掲載 |
対応業種 | トラック業界を含む車や歩行者の事例を掲載 |
対策 | 各動画ごとに具体的な対策を提案 |
特徴 | 実際のドライブレコーダーの動画を使用 |
料金 | 無料で閲覧可能 |
上記以外にも、各業界に特化したサイトは複数あるため、上手く組み合わせながら活用するのがおすすめです。自社の業務形態や必要性に応じて、適切なサイトを選択してください。
ヒヤリハットの報告方法と対策の立て方
ヒヤリハットの事例を有効活用するには、適切な報告と対策の立て方が重要です。
まずは、報告方法についてご覧ください。
■ヒヤリハットの報告方法
ステップ | 内容 |
---|---|
1.ヒヤリハット発生 |
|
2.報告書作成・提出 |
|
報告の段階では、5W1Hを意識した客観的な記録が必須です。
具体的には「いつ」「どこで」「誰が」「何をしたとき」「どのような状況で」発生したのか、そして「どのような危険が想定されたか」を詳細に記載します。
■報告を受けた後の対策の立て方
ステップ | 内容 |
---|---|
1.原因の分析 |
|
2.再発防止策の検討 |
|
3.対策の計画策定 |
|
対策を立てる際は、直接的な原因だけでなく、作業環境や管理体制など、間接的な要因まで掘り下げて分析することが大切です。
例えば「作業者の不注意」で片付けるのではなく、なぜその不注意が起きたのかまで考察します。
以上の取り組みを通じて、職場全体の安全意識を高め、重大事故の未然防止につなげることができるでしょう。
まとめ
本記事では、職場で発生するヒヤリハットについて、具体的な事例、報告方法まで詳しく解説してきました。
- ヒヤリハットとは、一歩間違えば事故につながりかねない状況のこと
- 重大事故1件の背後には300件のヒヤリハットが存在する
- 製造業、建設業、事務所、介護職など、業種別の具体的な事例を紹介
- ヒヤリハット事例を集めた参考サイトの特徴と活用方法
- ヒヤリハットの報告から対策の立て方
ヒヤリハットの報告・分析は、重大事故を未然に防ぐために欠かせません。日々の業務で発生するヒヤリハットを軽視せず、適切に報告・対策を行うことで、より安全な職場環境を実現できます。
本記事の内容を、自社の安全管理体制に活かしてみましょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
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