工場で使えるKY活動のネタ!マンネリ化を防ぐための例題を10個紹介
安全衛生最終更新日:
危険予知トレーニング(KYT)とは、グループで行うトレーニングで、作業現場での事故や危険を予測して未然に防ぐための活動です。
工場・製造業の現場にはあらゆる危険が潜んでいます。そのため、KYTを行うことで安全意識を高められ、危険の早期発見や安全な行動に繋げられます。
しかし、同じ現場の写真や作業シナリオ・ネタを使用したKYTを繰り返し行うと、マンネリ化しやすいのが欠点です。
同じ内容が続いてしまうと、危険に対する新しい視点が生まれにくく、安全意識が薄れてしまう恐れがあります。
そこで本記事では、工場・製造業のKYTのマンネリ化を防ぎ、より効果的な活動にするためのネタや例題をご紹介します。
作業現場でのKYTのネタにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
危険予知トレーニング(KYT)の目的と実施方法
KYTの目的は、作業現場で発生する事故を事前に予測し、防止するための意識を高めることです。
トレーニングを通じてチーム全体の危険に対する意識を高め、より安全な作業環境に近づける一つの方法です。
具体的な実施方法として、多くの現場では「4ラウンド方式」が採用されています。
4ラウンド方式は4つのステップで構成されており、それぞれ下表のような内容で進めていきます。
■各ラウンドごとの内容
各ラウンドごとの内容 | 目的 |
---|---|
1R:現状把握 | チームメンバー全員で作業内容や現場の状況を確認 |
2R:本質追究 | 挙げられた危険の原因について考える |
3R:対策樹立 | 特定された危険に対する具体的な対策を話し合う |
4R:目標設定 | 提案した対策の中から特に重要なものを選ぶ |
段階的にトレーニングを進めると、作業中の危険を見落とすことなく、適切な対策を立てられます。
また、チームでの話し合いを通じて、メンバー全員の安全意識を高めることができるのも、4ラウンド方式の大きな特徴です。
■関連記事
危険予知トレーニング(KYT)のさらに詳しい実践方法は、危険予知トレーニング (KYT) って?電気工事現場での実践方法を解説で詳しく解説しています。
工場における危険予知トレーニング(KYT)のポイント
工事現場におけるKYTは、作業員の安全性を確保する上で重要です。
工場の現場では、機械への巻き込まれや重機との接触事故など、危険な要素が多く存在します。
安全に作業を行うためには、以下のポイントを押さえたKYTの実施が必要です。
■工場におけるKYTのポイント
- 過去の事故やヒヤリハットを共有する
- 実際の設備を使用して危険箇所を確認する
- KYTの定期的な見直しを更新をする
ヒヤリハットとは、危険を感じたが事故にはならなかった事例のことです。過去の事故とヒヤリハットの共有で、より具体的な危険の予測が可能になります。実例に基づいたKYTは、作業員の危険意識を高められるでしょう。
なお、口頭だけでなく、現場の写真や実際の設備を使用したKYTも有効です。日々の作業の注意点がより分かりやすくなります。
また、新しい機器の導入や作業内容の変更が生じた際は、KYTの定期的な見直しと更新が欠かせません。
過去の事例だけではなく実際の設備を使用し、KYTの変更を行いながら、より安全で働きやすい環境を作っていきましょう。
工場・製造業で使える危険予知トレーニング(KYT)ネタ・例題
ここでは、工場や製造業で使えるKYTのネタや例題を10個紹介します。
ご紹介するネタや例題は、すべて4ラウンド方式になります。現場でのKYTにぜひご活用ください。
ボール盤での作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | バイスを使用せずに作業していると、加工物が回転してしまう。 |
〇 | 保護メガネを使用せずに作業すると、切り粉が目に入ってしまう。 |
〇 | 半袖で作業をすると、切り粉が皮膚に飛んできてしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | バイスで加工物を固定して外れないようにする。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
ボール盤の作業では、加工物が回転しないようバイスで固定してから作業をする。 | 固定ヨシ! |
フォークリフトでの荷物運搬作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 荷物で前が見えない状態で前進すると、前方の作業者に気づかず、接触してしまう。 |
◎ | 荷物で前が見えない状態で前進すると、前方の設備や壁に接触し荷物が倒れてしまう。 |
◎ | 回収機など高さのある荷物を運搬する時、固定していないと振動で荷物が倒れてしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | やむを得ず前進する場合は、誘導者をつける。 |
荷物で前が見えない時は、後進走行を行う。 | |
シャコ万や、ラッシングベルトで荷物を固定して運搬する。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
荷物で前が見えない場合は、誘導者をつけて前方の安全確認をする。 | 誘導者ヨシ!前方ヨシ! |
2t、4tトラックでの荷台昇降作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 昇降階段に足をかけてから昇降しないと、階段から足を踏み外し怪我をしてしまう。 |
◎ | 昇降階段に慌てて足をかけると、足を滑らせてしまう。 |
◎ | 昇降階段の握り棒を握ってから昇降しないと、バランスを崩してしまう。 |
〇 | 昇降階段をトラックのあおりに掛けてないと、昇降階段が外れてしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | トラック昇降時は、慌てず足をかけてから昇降する。 |
※ | トラック昇降時、昇降階段の握り棒を握ってから昇降する。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
トラック荷台昇降時は、慌てず階段に足をかけ、握り棒を確実に握ってから昇降する。 | 足掛けヨシ!握り棒ヨシ! |
可燃ごみの積載作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 軽トラに積載する際、足腰に負担がかかる。 |
◎ | 可燃ゴミが重いため、片手で持ち上げると体を痛める。 |
〇 | 可燃ゴミを軽トラに積載した後、シートをかけて走行しないと、ゴミが荷台から落下してしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 可燃ゴミを軽トラに積載する時は、足腰を傷めないよう、腰痛ベルトと手袋を着用する。 |
※ | 可燃ゴミを持ち上げる時は、片手ではなく両手で持ち上げる。 |
作業者が2人いる場合は、下から荷台上へ受け渡す。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
可燃ゴミを軽トラに積載する時は、保護具を着用し両手で持ち上げる。 | 両手持ち、保護具着用ヨシ! |
リフトフォークの取り扱い作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 手袋に粉が付いている状態でフォークを動かすと、手が滑ってしまう。 |
◎ | フォークを動かす時にフォークの高さが低いと、および腰になり腰を痛める。 |
〇 | フォークを広げる際、周囲に物がある状態で動かすと、物と接触してしまう。 |
〇 | 床が粉で汚れた状態でフォークを動かすと、足が滑って転倒してしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 手袋に粉が付いてないか確認をする。 |
※ | フォークの高さを腰の位置にする。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
フォークを動かす際は手袋に粉が付いてないか確認する。フォークの高さを腰の位置にしてからフォークを動かす。 | 高さヨシ!手袋ヨシ! |
台車を使用した荷物運搬作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 荷物を高く積んで運ぶと、荷物が崩れ作業者が怪我をしてしまう。 |
◎ | 荷物の重心が前側にあると台車の後ろ側が浮いてしまい、バランスが崩れる。 |
◎ | 軽い荷物の上に重い荷物を積んで運ぶと、バランスが悪くなり、荷物が崩れて怪我をする。 |
〇 | 台車の車輪が段差に引っかかると、反動で荷物が崩れ、作業者の体に当たる。 |
〇 | 勢いよく台車を押すと転倒して怪我をしてしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 荷物を積み重ねて置くときは、重い荷物を下にする。荷物の高さが台車のハンドルの高さを越えないようにする。 |
※ | 荷物を乗せる際は台車を取っ手側に寄せて置く。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
台車で荷物を運ぶ際は、重い荷物を下にする。荷物の高さ・重心位置を確認してから運搬を開始する。 | 高さ・重心 ヨシ! |
リーチリフトを使用した棚型ラックの運搬作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 通路が狭いため、リフトの運転に集中しすぎると、歩行者に接触してしまう。 |
◎ | ラックに気を取られ周囲の安全確認を怠ると、運搬の際に歩行者に接触してしまう。 |
〇 | リーチリフトは通常のリフトと操作方法が異なるため、操作に気を取られていると、周囲にいる作業者に接触してしまう。 |
フォークが水平ではない状態で運搬を行うと、トレイが落下してしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 運搬前に作業者・歩行者がいないことを確認する。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
ラックの運搬時は、周囲の安全を確認しながら運転する。 | 周囲安全ヨシ! |
脚立を使った作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 脚立を水平ではない場所に設置すると、脚立が傾いてしまう。 |
◎ | 脚立の止め金具をロックせずに使用すると、作業中に脚立が開いてしまう。 |
〇 | 脚立の上で無理な体勢で作業を行うとバランスを崩し、落下して怪我をしてしまう。 |
〇 | 脚立開閉の際に、可動部や回転部などに手や指を挟む。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 脚立を設置する際は、使用前に設置場所が水平で、がたつきが無いか確認する。 |
※ | 使用前は止め金具がロックされていることを確認する。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
脚立の使用時は、水平な場所に設置する。止め金具を確実にロックしてから作業する。 | 水平ヨシ!止め金具ロックヨシ! |
ドラムの積み上げ作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
---|---|
◎ | 高い所に積む際、体勢が悪いと腰を痛めてしまう。 |
◎ | ドラムを積む際に手を滑らせてしまうと、ドラムを落としてしまう。 |
〇 | 積み上げる時に、ファイバードラムの間に手を挟むと怪我をしてしまう。 |
ドラムの積み方が悪いと荷崩れを起こしてしまう。 | |
ドラムを持つと足元が見えづらくなる。パレット等に躓いて、転んでしまう。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 腰部保護ベルトを着用する。 |
※ | ドラムを3段積みにする。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
ファイバードラムを3段積みにして、保護具を着用する。 | 保護具着用、段数確認ヨシ! |
ハンドグラインダーを使用した切削作業
引用:株式会社 喜多村「みんな de KAIZEN < KY 活動>」
1.現状把握/2.危険予測
重要度 | 危険予測 |
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◎ | ハンドグラインダーの使用時、火花や切削くずが飛散してしまう。ほかの作業員が接近した際に、作業員の目に入る可能性がある。 |
〇 | 保護メガネを着用していないと、火花や切削くずが目に入ってしまう。 |
〇 | 保護手袋を着用していないと、手がグラインダーに触れた際に怪我をする。 |
◎は最重要危険ポイント、〇は重要危険ポイント
3.対策立案
重要度 | 対策案 |
---|---|
※ | 飛散する方向を把握する。 |
※ | 他の作業員が接近した際は作業を止める。 |
※は重点実施項目
4.行動確認
チーム行動目標 | 指差し呼称 |
---|---|
切削作業する際は、事前に飛散方向を確認してから作業し、第三者が接近して来たら作業を止める。 | 周囲ヨシ!方向ヨシ! |
まとめ
本記事では、工場・製造業におけるKYTの目的や実施方法、現場でも使えるネタ・例題について解説しました。
- KYTの目的は、作業現場で発生する事故を予測し、危険に対する意識を高めること
- KYTは多くの現場で「4ステップ方式」が採用されている
- 過去の事故とヒヤリハットの共有で、より具体的な危険の予測ができる
- 工場では、新しい機器の導入や作業内容が変更した場合は、KYTの見直しと更新が必要
KYTは作業現場での危険を予測するために有効な方法で、チーム全体の安全意識を高められます。
しかし、同じ内容を繰り返すとマンネリ化してしまい、危険に対する意識が薄れてしまいます。
そのため、工場・製造業の現場での安全意識を高めるには、KYTのネタや例題を新しいものに変えないといけません。
本記事を参考に、ご自身の現場でのKYTに役立ててください。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
株式会社H&Companyが運営する電気工事業界専門の転職サイト「工事士.com」の編集部です。
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