工場のヒヤリハット事例まとめ!原因や事故を防ぐための対策方法も解説
安全衛生最終更新日:
工場内における作業では、転落や転倒、機械への巻き込まれなど、さまざまな種類のヒヤリハットが日常的に発生しています。
工場での作業中に「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
本記事では、実際に工場で起きたヒヤリハット事例とその具体的な対策方法について、分かりやすく解説していきます。
工場での安全管理に関わる情報をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ヒヤリハットの基本情報
ヒヤリハットとは、重大な事故には至らなかったものの、事故に繋がりかねない出来事を指します。
厚生労働省によると、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、その背後にさらに300件のヒヤリハットが潜んでいるとされています。
ここからは、ヒヤリハットについて下記2点を詳しく解説していきます。
ヒヤリハットについてもっと詳しく知りたい方は「ヒヤリハットとは?職場の安全意識を高める活用方法を解説」もあわせてご確認ください。
共有する目的
職場でヒヤリハットを共有する主な目的は、実際に起きた事例から従業員全員が危険を認識することで、重大な労働災害を未然に防ぐことです。
危険な状況や事故の予兆を早期に発見し、適切な対策を講じることで、重大事故の発生を防止できます。
ヒヤリハットを共有する具体的なメリットは下記のとおりです。
■ ヒヤリハットを共有するメリット
- 作業者全員の安全意識が向上する
- 類似した事故の予防につながる
- 職場全体で危険箇所を把握できる
- 効果的な安全対策を立案できる
ヒヤリハット情報を共有し、「自分ならどうするか」「何をすれば防げるのか」を全員で考えることで、職場に安全意識を根付かせることもできるでしょう。
さらに、定期的な共有と対策の実施により、継続的な安全性の向上も期待できます。
報告書の書き方
ヒヤリハット報告書は、事実を正確に記録し、効果的な対策につなげるために重要です。
報告書を記載する際は、特に以下の項目を含めるようにしましょう。
■ ヒヤリハット報告書の主な記載項目
- 発生日時:いつ発生したか
- 発生場所:どこで起きたか
- 作業内容:何をしていたか
- 状況説明:どのような状況だったか
- 想定される被害:放置した場合どうなったか
- 原因分析:なぜ起きたのか
- 対策案:今後どう防ぐか
報告書は簡潔かつ具体的に記載し、現場の図や写真を添付すればより分かりやすくなります。
また、報告のしやすさを考慮して、Googleフォームなどのデジタルツールを活用するのも効果的です。
些細な事例でも積極的に報告できる環境づくりが、安全な職場づくりに繋がります。
工場におけるヒヤリハットのネタ事例を紹介
工場の現場では、日々さまざまな種類のヒヤリハットが発生しています。
ここでは、実際に工場で起こったヒヤリハットの事例を種類ごとにご紹介していきます。
ヒヤリハットは、作業環境や使用する機械、取り扱う物質によって発生リスクが異なります。
各事例から、どのような状況で事故が起きやすいのか、どう防げば良いのかを学びましょう。
その他業種のヒヤリハット事例については、ヒヤリハット事例集|各業界の事例から学んで安全管理を徹底しよう!にまとめて記載しています。
墜落・転落
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
高所での清掃作業では、不安定な足場による転落のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの発生状況
厨房のコンロ(高さ約80cm)上に段ボールと丸椅子を重ねて登り、頭上のダクト内を清掃中にバランスを崩して転落しそうになった。
■ 原因
不安定な足場(段ボールと丸椅子の重ね置き)で高所作業を行った
■ 対策
- 専用の作業台や脚立など、安定した足場を使用する
- 柄の長いブラシを使用するなど、高所作業を回避できる代替手段を採用する
転倒
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
作業場での物品運搬時には、視界が制限されることによる転倒のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
パン工房から駐車場へパンの入った番重を両手で運搬中、作業通路に放置されていた空の番重に気づかずつまずき、転倒しそうになった。
■ 原因
- 持っていた番重で足元が見えにくかった
- 作業通路に空の番重が放置されていた
- 通路の安全確認が不十分だった
■ 対策
- 作業通路に物を置かない
- 作業開始前の通路安全確認を徹底する
- 運搬時は視界が確保できる段数以下にする
衝突
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
フォークリフトの後退走行時には、視界が制限され、他の車両や作業者との衝突のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
倉庫内で2台のフォークリフトが後退走行中、お互いの存在に気付かず交差地点で衝突しそうになった。両者とも後退警報器は作動していたが、自車の音が大きく、相手の警報音に気付かなかった。
■ 原因
- 後方確認が片側のみに偏っていた
- 後退警報器の音が互いの音でかき消されていた
- 交差点での安全確認が不十分だった
■ 対策
- 後方全体の安全確認を徹底する
- 交差点での一時停止を義務付ける
- 必要に応じて誘導員を配置する
落下
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
重量物の吊り上げ作業では、荷崩れや落下による事故のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
溶接作業後、1トン吊りのマグネットで1.2トンの鉄材を吊り上げた際、バランスが悪くマグネットから外れかけ、まくら材の上に落下しそうになった。
■ 原因
- マグネットの定格荷重を超える重量物を吊り上げた
- 吊り上げ時のバランス確認が不十分だった
- マグネットの取り付け位置が適切でなかった
■ 対策
- 吊り荷の重量とマグネットの能力を事前確認する
- マグネットは荷の中心に取り付ける
- 吊り上げ前にバランスチェックを徹底する
挟まれ
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
回転機械を使用する作業では、衣服や手袋が巻き込まれる事故のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
ボール盤でステンレス板に穴あけ作業中、台上の不要物を軍手をしたまま取り除こうとした際、回転中のドリルに手袋が巻き込まれそうになった。
■ 原因
- 回転中のドリルがある状態で不要物を除去した
- ボール盤作業時に軍手を着用していた
- 作業前の整理整頓が不十分だった
■ 対策
- ボール盤作業は素手で行う
- 作業前に台上の不要物を撤去する
- 清掃や片付けは必ず機械を停止してから行う
火傷
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
高温水や蒸気を使用する洗浄作業では、火傷や熱傷のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
簡易型の熱水調製パイプを使用して設備の洗浄作業中、突然蒸気が噴出してホースが暴れ、熱水のしぶきが作業衣の脚部にかかった。作業衣の外側のみの接触だったため、火傷は免れた。
■ 原因
- 水道水の供給量が不足した
- 簡易型の熱水調製パイプで温度管理が不安定だった
- 適切な保護具の着用が不十分だった
■ 対策
- 安全性の高い専用の「スチームウォーターミキシングバルブ」を導入する
- 作業時は保護具(作業衣、ゴム手袋、長靴、保護メガネ)を必ず着用する
- 水圧や温度の定期的な確認を徹底する
感電・火災
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
電気炉での精錬作業では、高温環境下での作業に加え、酸素ガスの漏出による火災や爆発のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
製鋼工場の電気炉で精錬作業中、機械の不具合で遠隔操作が停止。原因調査のため作業員が接近したところ、異常な量の酸素ガスが漏出しているのを発見し、すぐに酸素バルブを閉止した。密閉空間での漏出であれば、高濃度酸素による発火の危険性があった。
■ 原因
- 電源系統の異常で機械が停止した
- 機械停止後も酸素供給が継続していた
- 安全システムが不十分だった
■ 対策
- 機械停止時は関連機器も自動停止するよう設定する
- 異常値検知時の自動停止システムを導入する
- 適切な換気設備を設置する
- 密閉空間が生じにくい作業環境を整備する
有害物質
※出典:厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」
密閉空間や地下ピットでの作業には、酸素欠乏による事故のリスクがあります。
■ ヒヤリハットの状況
廃液処理場の地下ピット内で作業者が倒れているのを発見。すぐに救助しようとピット内に入ろうとした際、同僚に制止され、酸欠による二次災害を免れた。
■ 原因
- 酸欠の危険性がある場所での単独作業
- 救助時の安全確認不足
- 危険場所での緊急時対応手順の認識不足
■ 対策
- 危険箇所での作業は必ず複数人で行う
- 酸素濃度の測定を徹底する
- 緊急時の対応手順を明確化し、全従業員に周知する
- 救助用の呼吸具を適切な場所に配備する
なお、工場内で起こったヒヤリハット事例をもっと知りたいという方は、厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」をご覧ください。
製造業に特化した事例も豊富で、社内教育に活用できるPDF資料も無料でダウンロード可能です。
工場でヒヤリハットが起きる原因は?
ヒヤリハットには、必ずその背景に原因が存在します。
工場でヒヤリハットが起きる原因は、主に下記のとおりです。
ヒヤリハットの要因は、一見すると基本的な内容に思えるかもしれませんが、疎かにすることで重大な事故につながるリスクが高まってしまいます。
それでは、各原因について詳しく見ていきましょう。
5Sが徹底されていない
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の不徹底は、工場内のヒヤリハットの根本的な原因となっています。
なぜなら、5Sが徹底されていない現場では、作業環境に起因した様々な危険要因が隠れているからです。
例えば、「通路に置かれた空箱につまずく」、「工具が定位置に戻されていないために慌てて探す」、「清掃不足で床が滑りやすくなる」など、多くのリスクを抱えています。
特に問題なのは、5Sの不徹底が作業者の注意力低下を引き起こす点です。
乱雑な作業環境では、本来の作業に集中できず、思わぬミスや事故につながりやすくなるでしょう。
5Sを徹底することで、以下のような効果が期待できます。
■ 5Sの徹底による効果
- つまずきや転倒の防止
- 作業効率の向上
- 危険箇所の早期発見
- 職場全体の安全意識向上
まずは、ご自身の作業環境を見直してみて、ヒヤリハット事例と同じような事象がないか確認してみましょう。
情報共有が不足している
情報共有の不足は、同じようなヒヤリハットが繰り返し発生する要因となります。
例えば、ある作業者が経験したヒヤリハットが共有されていないために、別の作業者が同じような危険な状況に遭遇してしまうケースが少なくありません。
特に注意が必要なのは、以下のような情報です。
■ 共有すべき情報
- 作業手順の変更点
- 設備の不具合や故障
- 危険が予測される作業環境
- 過去に発生したヒヤリハット事例
各自が得た情報を朝礼や終礼、作業引継ぎ時にしっかりと共有することで、事故を未然に防ぐことができます。
また、共有された情報をもとに、作業手順の見直しや設備の改善など、具体的な対策を講じることも重要です。
作業手順が徹底されていない
作業手順の不徹底は、重大な事故につながる可能性が高く、ヒヤリハットの原因となります。
具体例として、機械の清掃時に電源を切らない、重量物を一人で持ち上げる、保護具の着用を省略するなど、「面倒だから」「急いでいるから」という理由で手順を省略してしまうケースが多く見られます。
このような作業手順の省略や簡略化は、以下のようなリスクを生み出す危険性が高まります。
■ 作業手順不徹底により起こりやすいリスク
- 機械への巻き込まれ
- 転倒や落下
- 薬品による被害
- 感電事故
「たった一度だけなら大丈夫」と思っていても、それが重大事故のきっかけとなる可能性があることを作業者全員が認識することが大切です。
工場内でヒヤリハットを減らすための対策方法
工場内でヒヤリハットを効果的に減らすためには、以下の4つの対策が効果的です。
■ 工場内でヒヤリハットを減らす対策
対策項目 | 具体的な取り組み |
---|---|
報告ルールの整備 |
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定期的な安全教育の実施 |
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作業環境の整備 |
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安全管理体制の構築 |
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以上の対策を組み合わせて実施することで、より効果的にヒヤリハットを防止できます。
特に重要なのは、対策を一時的なものとせず、継続的に実施することです。
また、定期的に効果を検証し、必要に応じて対策内容を見直すことも重要でしょう。
さらに、危険予知活動(KY活動)や危険予知トレーニング(KYT)を学ぶことで、工場内の安全管理をより高めることも可能です。
まとめ
本記事では、工場内のヒヤリハット事例や原因、対策などについて解説してきました。
- 工場で起きやすいヒヤリハットは「墜落・転落」「転倒」「挟まれ」「火傷」「感電・火災」など
- 工場でヒヤリハットが起こる原因は「5Sの不徹底」「情報共有の不足」「作業手順の不徹底」など
- 工場のヒヤリハットを減らすためには、「報告ルールや作業環境の整備」「安全教育の実施」「安全管理体制の構築」などの対策が必要
工場でのヒヤリハットは、適切な対策を講じることで防ぐことができます。
日々の報告活動や安全教育、作業環境の整備など、基本的な取り組みを確実に実施することが重要です。
活動を継続的に行うことで、安全な職場環境を築くことができるでしょう。
執筆者・監修者
工事士.com 編集部
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